EYE's Journal

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53-11

シリーズ53 令和3年度大学入学者選抜
Part.11 
オンライン選抜(2)
~高校の対策、大学の対応をヒアリング~

編集部
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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令和3年度入試では、総合型選抜・学校推薦型選抜を中心にオンラインを活用する大学が増えている。こうした状況を、現場の高校教員はどうとらえているのだろうか。また、オンライン選抜を実施する大学は、どんな対応を行っているのだろうか。日本ドリコム編集部では高校・大学の担当者にヒアリングを実施した。

オンライン模擬面談を実施する一方
当日のトラブルの発生・対処を懸念

まず高校側のヒアリングでは、トラブルの発生・対処が懸念されているようだ。

「大学のオンライン説明会では、繋がらない・接続が途切れるなど不安定なケースがあったので、入試でのオンライン面談でも不安がある。通信環境や、アプリ・機器の操作方法に不安がある生徒もいたため、学校内のPCや通信環境を整え、面接を受ける場所を自宅か学校か選べるようにした。

実際の練習では従来の対面式の面談を行っているが、大学には通信の切断やPCの不具合など、面接当日にトラブルが起きたときには柔軟に対処していただきたい」(東京都・私立高校)

一方で通信制の高校では、オンラインへのハードルの低さが感じられた。

「通信制の大学を志望する生徒も多く、オンラインに対する不安は少ないようだ。だが今後、総合型・学校推薦型以外に一般選抜でもオンライン選抜が導入されるのかは気になっている。それなりの対策が必要になるかもしれない」(東京都・通信制高校)

また具体的な対策を行っている高校もあった。

「オンライン面談が不安な生徒には、校内で模擬オンライン面談を行い、機器やアプリの操作方法などに慣れる練習をしている」(東京都・私立高校)

入試の全体数からはオンラインはまだまだ少数派。「現状では特別な対策を行っていない」との回答もあり、高校側はあくまで対面式の面談の延長線上と位置づける高校が多いようだ。

事前に接続テストを実施し
安定した通信環境と、公正性に配慮

一方の大学側では、やはり通信環境と公平性の確保のためにさまざまな対策を行っているようだ。

「事前にZOOMの接続テスト日を設け、オンライン相談も行っており、当日のトラブル回避を減らしたいと考えている。ただ、すでに行った通信テストではスマートフォンでの接続が多く、受験生側の環境に不安はある。

また、画面の縦と横が逆など操作の方法や、面談者以外に複数の生徒がいるなど、オンラインに慣れていない印象もあった。受験に際しては、モバイル回線の場合は通信制限設定や通信容量の残量に注意してもらうと共に、有線LANを利用したパソコンなど、より安定した受験環境を推奨している」

と神奈川大学の担当者は話す。オンラインでのマナーやリテラシーがあれば、より大学側によい印象を与えることができるだろう。

「受験生には事前に受験時と同環境での接続テストを義務づけており、自宅等での通信環境に不安がある場合は大学キャンパスに来校し、大学の通信環境やPCを利用しての受験も可能にした。この場合もオンラインでの実施とし、受験機会の公平性を期している。全ての受験者が公平・公正に、安心して受験できるよう配慮している」

と東京都市大学の担当者は話す。同大学は、早い時期からオンラインでの実施を決め、ホームページでいち早く情報を公開している。「早く情報を知り、生徒が準備をする時間を長くしてあげたい」と担当者は話す。

「受験生の責によらない理由で通信環境の不具合が生じ、試験続行が困難になった場合は、電話面談に切り替えるなど代替措置を講ずることを想定。特定の志願者が不利益を被ることがないよう、他の受験生との公平性を担保した上で、可能な限り柔軟に対応できればと考えている」

と、明治大学からは回答をもらった。ホームページでは、「試験当日、ZOOMミーティングを別途実施して通信環境・本人確認を行う。公平な試験実施の観点から、オンライン面接の内容を撮影・録画・録音することもある。」と要項に記す。

当日、通信環境が確認できるが慌てないよう、事前の準備・確認を行う必要があるだろう。

また、桜美林大学はホームページで「使用機器はPCの他にスマホ・タブレットでも可。受験中は携帯電話を机の上に置くよう指示(接続に不具合があったり不正行為をした場合、受験中に大学から電話をすることがある。受験以外への使用厳禁)。事前にZOOM接続テストを行う」としている。

指定がないとスマートフォンを利用する生徒が多くなりそうだが、PCなど画面の大きいものを利用した方が、お互いにコミュニケーションがスムーズであろう。

ほとんどの大学では、事前の接続テストを必須としており、試験当日の通信トラブルを最大限回避しているようだ。また当日のトラブルに関しても、柔軟に対応してくれるようなので、闇雲に不安を感じる必要はないだろう。

また、オンライン選抜に関する評価のポイントとして、

「出願書類や課題レポート、小論文だけでは評価できない部分もある。オンライン面接では、各入試要項に記載されている受験生に求める資質、具体的には主体性、協働性、志望動機、学習意欲等を評価する予定である」(明治大学)

「自己紹介などはオンラインも対面型も大きく変わらないと考えるが、プレゼンテーションは伝え方の工夫も必須。十分な練習が必要だろう」(東京都市大学)

等のアドバイスがうかがえた。

各大学のホームページでは、オンライン選抜に関する実施方法・注意点等が詳しく掲載されている。事前準備・実施内容をしっかり確認するとともに、一般の面接同様、十分な準備をして本番に臨んで欲しい。

お忙しい中、ヒアリング調査にご協力いただいた皆様に厚くお礼申し上げます。ありがとうございました。

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