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5-3シリーズ5 忙しい先生の業務効率化と円滑な学校運営
Part.3
学校教員の負担を考える①
「忙しい」が教員の心とからだを蝕む
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定年を前に学校を去る教員、心を患って休職する教員が増えている。その要因がPart.1で見た「多忙」にあることは容易に想像がつくが、同じ多忙でも、意味のある多忙と、徒労感をともなう多忙は別ものだ。当然、解決に向けた手だてや、その優先順位も違ってくる。教職員組合関係者に聞いた現場の実情を交えながら、学校教員の負担について考えてみたい。
退職者、精神性疾患者が急増
グラフ1は、文部科学省が3年ごとに行っている「学校教員統計調査(高等学校)」の離職教員に関する調査から、「定年(勧奨)」「死亡」を理由とするものを除いた、いわば自主退職者数の推移である。含まれる理由は①病気②転職③大学等入学④その他。
1998年(総数3,301人)と2001年(同3,368人)に大きな差は見られないが、理由「その他」の急増によって、2004年には前回調査比で13.1%増の、3,874人にまで増えている。
2007年12月末、文部科学省は、学校教員の負担を裏づける調査結果を発表した。「教育職員に係る懲戒処分等の状況について」――日の丸・君が代問題や、不祥事によって懲戒処分を受けた教員についての報告としか思えない表題ながら、そこには「病気休職」する学校教員、および「精神性疾患者」の内訳が含まれているのだ。
同報告によると、2006年度、病気で休職する公立の小・中・高校、中等教育学校、特別支援学校の教員は7,655人。うち、精神性疾患による者が4,675人で、その割合は61.1%にものぼる。
厚生労働省の2005年「患者調査」によると、人口10万人に対する主な傷病の患者数は6,696人。そのうち「精神および行動の障害」および「神経系の疾患」による者は9.2%の619人である。教員だけを対象とした実態調査と、限られた病院のデータをもとにしたサンプル調査による推計を単純に比較することはできないにしても、61対9の差はあまりにも大きい。
〔資料出所:文部科学省「学校教員統計調査(高等学校)」〕
年々増え続ける教員の精神性疾患による休職
また、精神性疾患を理由に休職する教員が増え続けているのも気ががりである(グラフ2参照)。
1996年度の1,385人が翌年度には1,609人に増え、2000年度はさらに2,262人に増加、2005年度の4,178人に続き、2006年度もまた増えた。この10年、一度も減ることなく増え続けている。1996年度に比べて、10年後にあたる2006年度の精神性疾患による休職者は、実に約3.4倍にものぼっている。
2006年10月、安倍内閣のもとで設置された教育再生会議は、翌2007年1月の第一次報告の中で「あらゆる手だてを総動員し、魅力的で尊敬できる先生を育てる」とうたい上げ、次の4つの提言を行った。
(1)社会の多様な分野から優れた人材を積極的に大量に採用する
(2)頑張っている教員を徹底的に支援し、頑張る教員をすべての子供の前に
(3)不適格教員は教壇に立たせない。教員養成・採用・研修・評価・分限の一体的改革
(4)真に意味のある教員免許更新制の導入
同報告がいう「頑張っている教員」の中に、精神を患うまでに頑張っている教員は含まれていたのだろうか。「優れた人材の積極的採用」をいう前に、優れた人材が退職しないような職場づくりが必要という意見は出たのだろうか。
〔資料:文部科学省「教育職員に係る懲戒処分等の状況について」より〕