EYE's Journal

いま知りたい教育関連のテーマについて、ドリコムアイ編集部が取材・調査

24-2

シリーズ24 動き出した大学ポートレート
Part.2
学ぶ内容や学び方で検索できる
大学選びの新たなツールに(後編)

独立行政法人大学評価・学位授与機構 大学ポートレートセンター事務室長
小山田 享史(おやまだ・りょうじ)
日本私立学校振興・共済事業団 私学経営情報センター長
谷地 明弘(やち・あきひろ)
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
公開:
 更新:

大学・短期大学の教育情報を活用・公表するための「大学ポートレート」が動き始めた。進学希望者や高校などに向けた「公表」の部分を中心に、しくみや利用するメリットなどについて、大学ポートレートセンター事務室長の小山田享史氏と日本私立学校振興・共済事業団の谷地明弘氏に話を伺った。

入れる大学選びから入りたい大学選びへの転換

▲小山田氏(写真左)、谷地氏

大学ポートレートを使うことは、進学希望者や保護者、高校の進路指導担当教員など進学にかかわる人たちにとって、どのような意義、メリットがあるのだろうか。それについて、小山田氏と谷地氏はそれぞれ次のように説明する。

「いまの大学選びでは、偏差値を基準にして入れる大学を選ぶ傾向が強いのではないでしょうか。その結果、入学後に『こんなはずじゃなかった』とドロップアウトしてしまう学生さんも増えていると聞きます。

これからは、大学ポートレートを使うことによって、偏差値偏重による入れる大学選びではなく、自分がどういう知識、技術、能力を身につけたいのか、その大学にいけばどういう道がひらけるのか、という観点での大学選びがしやすくなると思います。大学ポートレートは、そういう情報を公表しているので、大学選びを、入れる大学選びから入りたい大学選びに切り替えていくための有力なツールになると考えています」(小山田氏)

進学希望者との出会いの場になり
進路指導に役立てることも可能

▲大学ポートレート(私学版)WEBサイト

「私立は全国にさまざまな大学があり、それぞれ教育理念、教育内容、教育方法などに特色があります。そういうたくさんの私立大のなかから、大学ポートレートを使うことによって、自分に合った大学を選ぶことができるようになります。

学んでみたいこと、将来の進路などから自分に適した大学を見つけられるということですね。とくに、先ほどお話しした『取組』で検索すれば、学べる内容だけでなく、学び方、学生生活、就職などにかかわる数多くのキーワードで大学を探すことができます。

大学ポートレートで検索すれば、昨日まで名前も知らなかった大学がパッと目の前に出てくることもあるでしょう。

我々はよく『出会いの場』という言葉を使うのですが、大学ポートレートはまさに進学希望者や保護者の方々と大学との出会いの場だと考えています。高校の先生方にも、学べる内容や学び方を中心にした進路指導に役立てていただけるのではないかと思っています」(谷地氏)

共通フォーマットなので情報の比較も簡単

これまでも各大学はホームページを通じての情報発信に力を入れてきた。ただ、ホームページの構成、内容、情報量などは大学ごとにさまざま。特定の大学だけ検索して調べる場合はそれでも充分だが、たとえば同名学部の特定の内容について複数の大学を横断的に調べるのは必ずしも簡単とはいえない面もある。

大学ポートレートは、国公立大、私立大ともそれぞれ共通のフォーマットで、共通の項目に同じようなかたちで情報が載っている。

また、学部名で検索すれば、その学部がある大学名がすべて表示されるので、たとえば同名学部の特定の内容について、A大学、B大学というふうに次々に調べて比較することも簡単にできる。こういうところにも大学ポートレートを使うメリットがありそうだ。

幅広く使われるように
周知活動にも取り組む

このように、いろいろなメリットのある大学ポートレートだが、広く使われてはじめて意味のあるシステムになる。そこで、大学ポートレートセンターでは大学ポートレートの周知にも力を入れていく考えだ。

「広報活動はとても重要なので、プレス向けに情報をリリースして積極的に発信していきたいと考えています。併せて、全国の高等学校、教育委員会、知事部局の教育担当部署などに案内文をお送りして、こういうシステムがスタートしたことをPRしていきます。

さらに、進路指導の先生方の会合が各地でありますので、そういうところにも出向いて説明させていただく予定です」

(編集部注:2014年12月5日には福井県で行われた会合に参加した)

多言語化による国際発信など
今後もさらに充実を図る

大学ポートレートは、2015年度以降も内容の充実を図っていくことになっている。小山田氏は次のように話す。

「2015年度以降は、まず国際発信を考えていきます。具体的にいうと、公表ページの多言語化ですね。海外からの留学希望者などに向けて日本の大学の情報を発信していき ます。

また、大学による情報の活用についても道筋をつくりたいと考えています。どういう情報をどのように分析して教育改善や経営改善に役立てていけばいいのかという分析指標づくりを進めていきます。

さらに、大学ポートレート稼働後には、ユーザーである受験生や保護者の方々、高校の先生方などから、いろいろなご意見が出てくると思いますので、そういったご意見も反映させながら、より便利で使いやすい大学ポートレートにしていきたいと思います」

Part.3は、大学ポートレートの活用方法についてご紹介します。

新着記事 New Articles