EYE's Journal

いま知りたい教育関連のテーマについて、ドリコムアイ編集部が取材・調査

28-1

シリーズ28 短期大学の魅力再発見
Part.1
一般社団法人 東京都私立短期大学協会
時代に即応した多彩な学科で
きめ細かく充実した教育を展開

一般社団法人 東京都私立短期大学協会 会長
青山学院女子短期大学 学長
八耳 俊文(やつみみ・としふみ)
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
公開:
 更新:

短期大学は、時代の変化に対応して、複合的な領域を扱う学科、より幅広い教養を身につける学科、資格と直結した学科が次々に登場するなど変化を続けている。教育内容や教育方法、キャリア支援など、現在の短期大学の特色や魅力について、東京都私立短期大学協会の八耳俊文会長に話を伺った。

人間がつくりあげた知の体系に触れ 
社会に出ていくための力を修得

▲八耳 俊文氏

短期大学には、高等教育機関として、いつの時代にも変わらない役割があると八耳会長は話す。

「短期大学や4年制大学などの高等教育機関は、高校までに学んだことをベースにしたうえで、社会に出ていくための力を身につける場です。

短期大学で学ぶ科目は、人間が長い年月をかけて育み継承してきた『知』の体系によってできあがっています。そうした科目を学ぶことによって、さまざまな知識、物事のとらえ方や考え方が身につき、社会や生活のなかで応用できるようになる。そういう力を育てることが高等教育機関の役割であり、本来の『実学』なのではないでしょうか」

一方で、時代の変化をいち早くとらえ対応しているという。

「学問自体が、これまでの枠組みに収まりきれなくなって複合的な領域を扱う学科が増えています。あるいは、より幅広い教養を身につける学科も登場しています。また、保育士や幼稚園教諭など人材ニーズが高まっている分野では専門職を養成する学科も増えているのです」

変貌する短期大学の姿を伝えるため
平日の体験プログラムを設定

このように変貌する短期大学の姿を高校生や高校の先生方に伝えることにも力を入れている。

「本学の例ですが、ウイークデーキャンパスビジットというプログラムを採り入れています。通常の授業を行っている平日に高校生にきてもらって、短大生と一緒に講義を聴いたり、ゼミに参加したりすることができる機会を設けているのです。そうすることで、現在の短期大学の授業がどんなものか、学生がどんな様子で授業を受けているのかを直接知ることができます」

いま大学は授業時間の確保のため祝日でも授業を行う日がある。東京都だと「都民の日」は、都立高校は休みになる。そういう日を利用して青山学院女子短期大学では年に9回ぐらいウイークデーキャンパスビジットを行っているそうである。

「高校の先生方向けには、イブニングオープンキャンパスというプログラムを設けています。これは、高校の先生方に平日の夕方、本学にきていただいて、短期大学がいまどんな教育を行っているのかご説明し、懇談するものです」

学ぶ内容は豊富で多種多様 
きめ細やかな指導で授業も工夫

短期大学は2年間で密度の濃い授業を行うことやきめ細かな指導が特色といわれるが、実際はどうなのだろうか。

「短大生は高校卒業後の新しい学びに出会い身につけた2年後には卒業です。教養と社会人として活動できる実務を密度濃く学ぶことになります。

それをフォローする意味も含めて、学生の指導はきめ細やかに行っています。短期大学は規模が小さいので、教員が学生1人ひとりの様子を把握できる環境で授業を行い、学習進度が気になる学生には教員のほうから声をかけることもあります。学生も、そういう教育を求めて短期大学にきているのだと思います」

教育方法も、アクティブラーニングをはじめ、一方通行型ではない授業を積極的に取り入れているそうだ。

「短期大学は知識を学びながら、それをどう発展させるかについて能動的な学習を重視しているので、かつてのように教員が教壇で一方的に話をするという授業は少なくなっています。双方向性というか、教員と学生が議論したり、学生同士が議論したりする授業が多くなっていますね。

アクティブラーニングも、積極的に取り入れています。議論しやすいように机を配置するなど、アクティブラーニングに適した教室を設けるところも増えています。

さらに、教室内だけでなく、学外で学ぶフィールドワークなど体験型の授業を取り入れるケースがこれまで以上に多くなっていますね」

八耳会長は、地域との連携を重視しているのも短期大学の特色の1つだと指摘する。

「短期大学は中小都市を含め全国各地に幅広く分布しており、地方における高等教育を担い、地域社会に貢献しています。たとえば、地方の短期大学では保育士や幼稚園教諭を養成する学科があり、それはその地域の保育や教育を支えることにつながっているのです。

また、短期大学には図書館があり、パソコンなど教育設備が整っています。そうした教育インフラを、学生だけでなく、広く地域の方々が利用できるようにして、地域の『知の拠点』になっていくことも短期大学にとって重要なテーマだと思います」

充実したキャリア支援で就職好調 
短期大学フル活用で世界を広げる

就職を中心としたキャリア支援にも短期大学らしさが発揮されている。

「教養系でも資格系でも、入学時点から将来のキャリア形成に向けての意識づけをしています。それも、就職をどうするかということだけでなく、そもそも社会で働くとはどういうことかなど、各自のキャリア形成の基礎になる部分を考えさせるようにしています。

より具体的なキャリア支援としては、卒業後の進路の情報を提供することはもちろん、個別の相談にもていねいに対応しています。本学でもキャリアサポートルームを設けて、就職だけでなく編入学や留学などの情報も提供しています。カウンセラーを配置しているので、学生は進路についていつでも相談できます。実際に就職活動が始まれば、学生1人ひとりをしっかりフォローします」

このような支援もあって、短期大学の就職率は良好。ここ数年、右肩上がりで推移している。

ここまでの話も含めて、高校卒業後の進路の1つとして短期大学をどうとらえればいいのか伺ってみた。

「高校生のなかには早く社会に出たいという方も多いと思います。そういう方には、2年間で専門的な高等教育を受けながら、コミュニケーション能力や一般常識なども身につけられる短期大学が適しています。

卒業後の進路も選択の幅が広くなります。就職はもちろん、専攻科への進学、大学への編入学、海外の大学への留学などが可能です。本学でも、青山学院大学や他大学に編入学する学生がかなりいます。

私は、学生たちに短期大学は『自分を整える場』だと言っています。短期大学は、知識や技術を身につけるとともに自分を見つめ直し、次のステップに進む準備をする場所なのです」

そういう短期大学を積極的に活用してほしいと八耳会長は話す。

「先ほど触れたように、短期大学ではきめ細やかな少人数教育を行っています。授業でもキャリア支援でも学生に目が行き届き、相談も自由にできます。地域との連携、在学中の留学、姉妹校訪問などいろいろなプログラムも用意しています。こうしたしくみを存分に活用して自分の世界を広げる。そういう意欲を持って入学してくる方々を私たちは待っています」

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