EYE's Journal

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34-2

シリーズ34 国公立大学 新増設・改組のポイント
Part.2
【2017年度版】
教員養成系や人文社会系中心に
2017年度も数多くの改組を予定

編集部
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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国立大学は、2017年度以降に教員養成系や人文社会系を中心に自然科学系も含めて学部・学科の改組が相次ぐ予定。その背景を含めて改組のポイントを探ってみた。
※記事内容は取材時(2016年5月)によるものです。

第3期の中期目標期間に入り 
学部・学科の改組が急増

国立大学は、2016年度に数多くの学部・学科の改組があったが、2017年度以降もさらに改組が続くことになりそうだ。これは、国立大学が「中期目標・中期計画」(以下、中期目標と表記)と呼ばれるものを策定していることと関係がある。

国立大学は、2004年度に国立大学法人となってから、6年間ごとに中期目標を立てているが、2016年度からは第3期の中期目標期間に入る。

第2期の中期目標期間中の2013年に、文部科学省が「国立大学改革プラン」を策定。これは、グローバル化、少子高齢化、イノベーション(新しい価値を創造すること)へのニーズなど社会の急激な変化に対応するため、国立大学の改革を加速し、各大学がそれぞれの強みや特色を発揮して、より高い付加価値を生み出すようになることをめざしたものだ。

また、新たな中期目標期間が始まる前に、文部科学大臣が方向性などを示すことが法律で定められているため、この改革プランとは別に、2015年6月8日付で「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」という文部科学大臣決定が出された。

各国立大学は、この改革プランと文部科学大臣決定を踏まえて第3期の中期目標を策定したが、その内容には学部・学科の改組、教育研究組織全体の見直しなどが数多く盛り込まれている。

教員養成系や人文社会系の学部で
大きな改変に取り組む動き

改組についてみると、文部科学大臣決定を踏まえたものが目につく。実は文部科学大臣決定には次のような内容がある。

「(略)特に教員養成系学部・大学院、人文社会科学系学部・大学院については、18歳人口の減少や人材需要(中略)等を踏まえた組織見直し計画を策定し、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努めることとする」

この内容がテレビなどでも取り上げられて、なかには「国立大学から教員養成系や人文社会系の学部がなくなる?」といった論調で報道されることもあった。しかし、それは誤解による部分もあったようだ。

たとえば、「組織の廃止」は、少子化など社会の変化を踏まえて、教員養成課程のうち「ゼロ免課程」と呼ばれている、教員免許取得を卒業要件としない課程などの廃止を想定したものとされている。

人文社会系については、タテ割型の学問体系にとらわれず、グローバル化や新たな人材ニーズなど社会の変化に対応できるような内容への見直しを図るということであり、国立大学では文学や経済学などが学べなくなるということではない。いずれにしても、この大臣決定は各大学の中期目標にかなり反映されている。

教員養成系はゼロ免課程廃止を含め
見直しや改組が目立つ

教員養成系についてみると、定員全体の見直し、ゼロ免課程の廃止やそれを含む学部改組などを計画している大学が目立つ。

たとえば、茨城大は教育学部の情報文化課程、人間環境教育課程の募集を停止し、教員養成課程の定員増を行う計画だ。横浜国立大は教育人間科学部人間文化課程を廃止して学校教育課程のみの教育学部にする予定。新潟大は教育学部の学習社会ネットワーク課程、生活科学課程、芸術環境創造課程、健康スポーツ科学課程を廃止し、学校教員養成課程を強化する。このほかにも教員養成系学部の改組などを予定しているところがある。

人文社会系は改組によって
より幅広い学びが可能に

人文社会系の改組も多くの大学で予定されている。その内容をみると、従来の学部・学科の枠組みを見直し、複数の学問領域を横断するような学部・学科を設置したり、幅広い領域を学びやすくしたりするなどの方向での改組が増えていくことになりそうだ。

たとえば、山形大は人文社会科学系学部の教育研究組織の見直しを予定している。茨城大は人文学部を人文社会科学部に改組する計画だ。横浜国立大は経済学部2学科、経営学科4学科をそれぞれ1学科にする計画だ。新潟大は人文社会科学系学部の再編を予定している。三重大は人文学部の組織改革を推進している。九州大は人文社会科学分野等の再編成の検討・実施および機能強化に取り組む計画だ。

工学部・理学部などの改組や
新学部設置も計画

自然科学系でも、さまざまな改組予定がある。たとえば、北見工業大は工学部の改組を予定。茨城大は工学部と農学部で改組を計画している。埼玉大は理学部、工学部で学科の大括り化を図る。新潟大は自然科学系学部の再編を計画。滋賀大はデータサイエンス学部を新設する予定。九州工業大学は工学部、情報工学部を改組する計画だ。

3つの重点支援枠に沿って
学部・学科再編の可能性も

一方、文科省では、第3期の中期目標期間が始まるのに合わせて、平成28年度予算で国立大学の重点支援枠というものを設定している。重点支援枠は、各国立大学の機能強化の方向性に応じた取り組みを支援するための枠組みだ。具体的には、

①地域貢献(要約、以下同)
②専門分野の特性
③卓越した教育研究

以上の3つの枠があり、それぞれの国立大学は機能強化の方向性や第3期中期目標期間を通じて取り組む内容を踏まえて1つの枠を選ぶ。

②を選んだのは、筑波技術大、東京医科歯科大、東京外国語大、東京学芸大、東京芸術大、東京海洋大、お茶の水女子大、電気通信大、奈良女子大、九州工業大、鹿屋体育大、政策研究大学院大学、総合研究大学院大学、北陸先端科学技術大学院大学、奈良先端科学技術大学院大学。

③を選んだのは、北海道大、東北大、筑波大、千葉大、東京大、東京農工大、東京工業大、一橋大、金沢大、名古屋大、京都大、大阪大、神戸大、岡山大、広島大、九州大。

上記以外の国立大は、①を選んでいる。

文科省では、これらは各大学の機能や役割を限定したり、大学を類型化したりするものではないとしている。ただ、それぞれの大学は、強化したい方向に沿って支援枠を選んでいるわけであるから、たとえば、①を選んだ大学では、より地域貢献を重視したかたちでの学部・学科の見直しなどによって、改組が行われる可能性が出てくるかもしれない。

地域貢献では、すでに地域と連携して教育を進める学部などが登場しているが、そうした流れが加速されることにもつながりそうだ。

志望校の動向に注目し、幅広い情報収集を行う

このように、数多くの国立大学で2017年度以降に学部・学科の改組などが計画されている。それぞれの具体的な内容や実施時期などについてはまだ未確定な部分も多いので、幅広く情報を収集することが必要になる。

公立大学については、2019年度の大学新設はない。学部・学科の改組は、本誌編集時点(2月中旬)では文科省の申請受付が行われていないので、生徒の関心が高い大学がある場合は、ときどきその大学のホームページなどをチェックして早めに情報を入手するようにしたい。

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