EYE's Journal

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38-4

シリーズ38 新しい大学入試
Part.4 
高校現場の動き(2)都立八王子東高校
教科横断型など新傾向問題に対応し
思考力を伸ばす授業で総合力高める

東京都立八王子東高等学校
副校長 榎 茂喜 先生
教務主任 大塚 香 先生
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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八王子東高等学校は、国公立大学の2次試験対策を重視した学習指導を進めている。その2次試験対策と新テスト対策の関係、思考力などをこれまで以上に伸ばすための取り組み、生徒への今後の対応などについて、副校長の榎茂喜先生と教務主任の大塚香先生に話を伺った。

国公立2次試験対策を強化し
新傾向の複合型問題にも対応

新テストにどのように対応するのか。その基本的な考え方について、副校長の榎先生は次にように話す。

▲副校長 榎 茂喜 先生

「本校は難関大学をめざす生徒が多いということもあって、国公立大学の2次試験対策を重視した指導を進めています。センター試験に替わる新テストについては、2次試験対策をこれまで以上にしっかりやっていけば、充分に対応できるのではないかと考えています。

それに加えて、思考力などをより伸ばせるようなかたちの授業を取り入れて、生徒全体の力をさらに引き上げていきたいと考えています」

榎先生の話にも出てきたが、新テストを含む新しい大学入試では、思考力・判断力・表現力を重視するのが特色の1つとされる。これについて、教務主任の大塚先生はどのように受け止めているのだろうか。

▲教務主任 大塚 香 先生

「現在の2次試験でも、思考力・判断力・表現力といったものを意識した問題がつくられています。ですから、新しいかたちの問題や新しい傾向などを把握することは必要ですが、基本的な知識を使ったり、思考を深めたり、表現したりといったことについては、現在の指導のなかで対応できると思います。

新しい傾向ということでいえば、本校の2017年度の推薦入試では、物理現象について述べた文章を読んで小論文にまとめる問題を出題しましたが、大学の二次試験の中でもこのような教科横断型の問題が多く見られるようになってきています。このような複数の教科にわたる知識や力がないと対応できない問題がこれからますます出てくると思われるので、教科横断型の授業をどのようにすすめていくかを検討することが必要になると思います。

例えば、国語と地歴公民の授業のコラボ、社会と数学の授業のコラボといった新しいかたちの授業を構想することも可能だと思います。

コラボではないにしても、自分たちの教科だけでなく、他の教科では今どのような授業をしているのか把握しながら、生徒たちの知を総合的に高めていくということは今後さらに意識していくべき部分だと考えています」

同校の入試も思考力などを問うものだという。榎先生が説明する。

「本校の入試は前年度までグループ作成問題だったのですが、今年度から自校作成問題になり、これまで以上に思考力などを問う内容になると思われます。そういう入試を経た生徒が入学してくるので、それをベースにして授業を組み立て、より思考力を育てられるような取り組みを始めています。

思考力などを伸ばすという意味では、アクティブラーニング(以下、ALと表記)ももちろん取り入れていて、各教科とも授業の2割ぐらいはALで行っています」

国語でアクティブラーニング増やし
身につけたことを他教科にも応用

新テストでは、記述式・論述式を取り入れるのも特色の1つ。これについての対応を大塚先生はどのようにお考えなのだろうか。

「私は国語を担当していますが、国語についていえば、AL型の授業をもっと積極的に取り入れていきたいと思っています。ただ、ALについては、それによって何をできるようにしていくのか、授業の成果をどの段階で確認するのか、評価をどうするのか、といったことを明確化して、年間指導計画のなかでもっと体系的に位置づけていくことが必要になると思います。

国語でのALは、各教科のなかでは一番取り組みやすいかもしれません。題材を読んで生徒同士で話し合ったり、文章を書いてそれを共有したり発表したりといったことは現在も日常的に行っています。

生徒たちが、国語のALで身につけた知識や方法論をほかの教科にも応用していって、さらに、そこで学んだものを国語の授業に持ち帰って反映させることができるようになればいいなと考えています。そのALを含めて本校の国語では授業でかなりの文章を書かせているので、それが記述式・論述式問題への対応にもつながると思います。

さらに、3年生になると、学年の多くの生徒が記述問題で解いたものや文章を要約したものを個別に持ってくるようになるので、国語科の教員全員で添削指導をおこなっています」

英語は、外部試験利用の時期など未確定の部分も少なくないが、4技能を問い、記述式のライティング、スピーキングが加わることは決まっている。この英語についてはどのようにお考えなのか伺ってみた。

「4技能の生きた英語を学ぶことは大事ですね。本校では前年度から、フィリピンの学校とインターネットを使ったオンライン英会話をしています。生徒たちはリアルタイムで会話しながら、いろいろなことを学び、ときには冗談を言い合うなど生き生きと授業に取り組んでいます。

それ以外にも、例えば、昨年度はJETプログラムでアメリカから着任した講師の先生が、放課後の補習で理科の授業を英語で行うなど英語を使った学習の取り組みがなされ、生徒にはとても好評でした」(大塚)

新テストへの具体的な対応策などは検討しているのだろうか。

「ライティングは、現在でも2次試験対策として、かなり力を入れて指導しています。4技能のうち、書くことが一番難しい技能だと思うので、そこに焦点を当てて指導していけば、ほかの技能も向上するのではないでしょうか。ライティングは思考力や表現力を伸ばす意味でも重要ですね。

スピーキングについては、これまでも教員と生徒1対1のかたちでテストをするなど、個別対応の評価をおこなっています。教員が英語で質問して生徒が英語で答え、的確に答えられているかを評価するものです。新テストのスピーキングについては、どの程度重視するのか、評価をどうするのかなど、まだ議論が続いている段階なので、対応については最新の情報を集めながら考えていくことになります」(大塚)

生き抜く力を育むのが学校の使命
育てたい生徒像にふさわしい教育を

生徒への対応で、これから必要になってくることはあるのだろうか。

「新テストだからということではなく、生徒たちが自ら興味や関心を持っていろいろなことを調べたり、考えを深めたりしていけるようにすることが大切だと思います。そのためには、教員は学問を学ぶことの意義、例えば学問を学ぶとこういうところに使えるとか、こんなふうに世界を生き生きと見ていくことができるといったことを提示しなければいけないと思います。

受験だから勉強しなさいということではなく、1人の人間として社会で生き抜く力を持てるように生徒を育てる。それが学校の使命だと考えています」(大塚)

最後に、今後に向けての課題、これから必要になることについて大塚先生に伺ってみた。

「私の考えですが、新しい学習指導要領のもとでは、これまで以上にどういう生徒を育てていきたいのかを明確にしないとカリキュラムが組めないと思います。

新しい科目もあり、育てたい生徒像、入学から3年後にどんな人間として送り出していきたいのかがはっきりしていないと、どの科目をどういう配分で学ばせていけばいいのかが決められないからです。ですから、教員間で丁寧に議論しながら、どんな人間を育てたいのかを明確にして、それにふさわしい教育課程を編成していきたいですね」

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