東京の専門学校

都心の専門学校ならではの、特色ある学科やコースを取材

19-1

第19回 vol.1
建築監督科【4年制】
(前編)

専門学校東京テクニカルカレッジ
(東京都中野区)
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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全国から入学者を集める東京の専門学校にスポットをあて、教職員インタビューを通じてそのカリキュラムに迫ります。
建築物の立役者としてクローズアップされるのは、決まって建築士です。さしずめ設計は、建築の表舞台の仕事といえるでしょう。しかし、表と裏は必ず一対です。建築物は、施工という裏舞台の仕事なくして完成するものではありません。施工現場で働くたくさんの人、そしてモノや金を管理して、円滑な作業進行を図るのが建築監督。その養成課程が専門学校東京テクニカルカレッジ(東京・中野区)にあります。杉本安雄校長と高瀬恵悟教務部長が、インタビューに応じてくれました。

――なぜ、建築監督なのでしょうか。

▲杉本 安雄校長

杉本  産業構造や雇用形態の変化、就職難、若者の早期退職などを背景に、職業教育やキャリア形成が学校教育の課題となっています。中央教育審議会においても職業実践的な教育が審議の俎上にのぼり、その検討課題のひとつとして、既存の専門学校や大学とは別の、職業実践教育に特化した高等教育機関の創設も審議されているようです。

こうした中で、職業教育の課題は、イコール専門学校の課題でもあり、その当事者である私たちが、傍観しているわけにはいきません。

東京テクニカルカレッジにはすでに2年制の建築科があります。この建築科をベースに、大学並みの4年間を使った教育を行うとしたら、専門学校として何ができるのか。私たちは、まず、スーパーゼネコンをはじめとした建設会社が求める人材を調査するところからはじめました。そこでクローズアップされたのが建築監督、いわゆる現場監督です。

「建築監督ができる人が、のどから手が出るほどほしい」

建設会社からこんな声も聞かれました。そこで前田建設工業(株)や清水建設(株)といったスーパーゼネコンと連携して「建築監督育成のための高度専門士教育研究会」を立ち上げ、産学連携によるプログラムを含むカリキュラムを整えて生まれたのが、4年制の建築監督科です。

▲高瀬 恵悟教務部長

――建築監督とはどのような存在なのですか。

高瀬  たとえるならオーケストラの指揮者のような存在です。指揮者は楽器を奏でるわけではないし、必ずしも全ての楽器に精通している必要もない。けれど、指揮者がいないと演奏会が開けないように、監督がいないと現場は動かない。

――求められるのは技能よりもマネジメント能力、ですか?

杉本  たとえば実際の現場でコンクリートを流し込むとき、どれだけのコンクリートが必要か計算して無駄なく材料を調達するのは監督の役割です。

また、資材によっては一定期間以上前に発注しないと間に合わない物もあります。納期は早すぎても遅すぎてもいけないし、資材は多くても少なくてもいけない。

同様に、人の手配も監督の任務です。いつ、どこの現場に、どのような職人がどれだけ必要か……これはマネジメントにほかなりません。もちろん、必要な資材の数量を算出するなどの技能も必要ですが、それは覚えれば済むこと。大切なのは、現場の人、モノ、金をコントロールする技量です。

高瀬  最も優れた監督は、段取りだけで仕事をまっとうできる人です。自ら現場作業を行うことはありません。私もかつては建設現場で監督を務めていましたが、釘1本打ったことはありませんでした。

そういう意味ではとてもスマートな仕事です。企業にもよりますが、ネクタイ着用、作業着のアイロンは絶対条件、もちろん汚れていてはだめというドレスコードがある建設会社もあります。

《つづく》

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