東京の専門学校

都心の専門学校ならではの、特色ある学科やコースを取材

23-1

第23回 vol.1
インテリアデザイン科〔3年制〕
(前編)

専門学校 ICSカレッジオブアーツ
(東京都目黒区)
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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全国から入学者を集める東京の専門学校にスポットをあて、教職員インタビューを通じてそのカキュラムに迫ります。
実用性ばかりでなく、住居ならやすらぎや居心地の良さ、商業スペースなら購買意欲をそそるような空間を演出するインテリアデザインの概念が一般に受け入れられるには、そこに暮らす人々に、一定のゆとりが必要なのはいうまでもありません。
日本では、三種の神器といわれたテレビ、冷蔵庫、洗濯機が家庭にゆきわたった高度成長期以降ではないでしょうか。ところがそれと同時期、あるいはそれ以前に、インテリアデザインを教育する学校がありました。1963年創立の専門学校 ICSカレッジオブアーツです。まさにインテリアデザイン教育の老舗というにふさわしい同校を訪ね、インテリアデザイン科学科長の戸國義直(とくに・よしなお)先生に話を聞きました。

▲戸國 義直 先生

――日本ではじめて設立されたインテリアデザインの専門学校だそうですね。

高度経済成長のただなかにあった1963年の設立です。都市部のあちこちで団地型住居の建設がはじまったころですね。そんな画一的な住居に創立者は息苦しさというか、不自由さを感じて、将来は住まう人の好みやライフスタイルに応じた住空間へのニーズが高まると考え、開校した学校だと聞いています。

設立当初の校名はインテリアセンタースクール。インテリアデザインの言葉も概念も普及する以前のことですから、先見の明があったというばかりでなく、創立者自身、日本におけるインテリアデザインの第一人者になろうという意欲を抱いての設立だったのではないでしょうか。

――今日ではインテリアデザイン科のほかに、インテリアデコレーション科、インテリアマイスター科を開設されています。その違いを教えてください。

核になるのが3年制のインテリアデザイン科です。この学科では、室内空間そのもの、そして空間を彩る壁紙や照明、家具など、ありとあらゆるもののデザインを学びます。

対してインテリアデコレーション科とインテリアマイスター科は2年制の学科です。インテリアデコレーション科は室内装飾のスペシャリト、インテリアマイスター科は内装や家具職人の養成を主眼にしていますが、それぞれの技能だけでなく、室内空間全体を見渡すことができるインテリアデザイナーとしての資質育成にも踏み込んだカリキュラムを編成しています。

▲専門学校 ICSカレッジオブアーツ校舎

――インテリアデザイナーの職域は建築士と重なりませんか。

建物を設計して、その施工を管理するのが建築士の主な役割です。更地に新しく建物を造るには、さまざまな法規にのっとった申請が必要で、これは建築士の資格がないと許可されません。

対して既存の建物や建築士によって認可された建築中の建物の基本構造を変えることなく、その内装や外観に手を加える場合には、必ずしも建築士である必要はありませんし、そこでは建築設計とは違うものの見方や考え方、空間認識のセンスが求められます。インテリアデザインを得意とする建築士もいますが、建築士だからインテリアデザインができるというわけではありません。インテリアデザイナーの需要が、ここにあります。

もちろん、建築士の資格を取得しておけば、インテリアデザイナーとしての幅が広がることは間違いありません。建物の設計段階から室内の空間演出までトータルなデザインが可能になりますからね。

本校のインテリアデザイン科では、卒業と同時に2級建築士の受験資格が取得できますし、3年生を対象にした対策講座を開くなどして、建築士資格の取得を奨励しています。

▲チュートリアル授業

――デザインは、理論と技術だけでは習得できない、高度にセンシティブな分野であるのではないでしょうか。その教育はどのように行われているのでしょうか。

デッサンや製図、CADなど、基礎となる技能を低学年次に身につけ、高学年次では、5週間を1サイクルにした課題制作に取り組んでいきます。この課題制作は、すべて教員と学生の1対1、あるいは5人程度の学生グループ対教員によるチュートリアル方式で実践しています。1対1の個別チュートリアルは、それぞれの素養を引き出すことが大きな目的です。

一方のグループチュートリアルでは、他学生の制作過程やプレゼンテーションにも触れることができるので、独りよがりにおちいらないデザイン力がかんようされると考えています。

そして何より、本校に入学してくるのは一途にインテリアデザインを学びたい学生ばかりです。なかには高校の進路相談で大学を勧められたかもしれませんが、それでもぶれなかったくらい意欲も旺盛です。加えて大学を卒業した人、あるいは社会での就業経験を持つ人、さらには海外からの留学生の入学も少なくありません。こういった人は、相当の覚悟と自覚をもっているので、高校からストレートに入学してきた学生にはいい刺激になっているようです。

――留学生の出身地域に傾向はありますか。

いまは中国が多いですが、傾向は毎年変わってきており、過去には韓国や台湾が多い年もありました。

インテリアデザインへのニーズは、かつての日本がそうだったように、ある程度の豊かさが満たされた先に生まれてくるものではないでしょうか。その意味では、この先、発展著しい東南アジアからの留学生が増えるのではないかと期待しています。

――良質なインテリアデザインを学ぶために海を越えてくるわけですね。

加えて卒業と同時に取得できるノッティンガムトレント大学の卒業学位が、海外留学生には大きな魅力でもあるようです。

《つづく》

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