都心の専門学校ならではの、特色ある学科やコースを取材
21-2第21回 vol.2
醸造発酵コース〔3年制〕
(後編)
(東京都大田区)
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全国から入学者を集める東京の専門学校にスポットをあて、教職員インタビューを通してそのカキュラムに迫ります。
今回は、日本酒のほか、焼酎やワイン、ウイスキーなどさまざまなお酒が流通する現代、酒造り職人をめざせるコースを持つ、東京バイオテクノロジー専門学校(東京・大田区)を訪ね、お話を聞いています。
――所属コースは入学後に選ぶのですか。
東京バイオテクノロジー専門学校では、醸造発酵コースのほかに、DNA、動物バイオ、植物バイオ、食品開発、化粧品開発、環境科学、海洋科学、分析科学の計9コースを開設しています。その募集は一括募集で、1年次にはコース共通の授業を履修して、実習が本格化する2年に進級する段階でコースを決めます。
多くの学生は入学段階である程度コースを絞っているようですが、醸造発酵コースと食品開発コースの選択に迷っている学生や、入学後に志望変更する学生もいます。
バイオや実験に興味があれば、1つに絞りきれないままでも大丈夫。入学して学びながら、将来の進路に照らしてコースを選択することが可能です。
――酒造メーカー等に就職することはできますか。
2011年6月発表の政府統計によると、酒類製造業に属する事業所は全国に2,200余り。うち250ほどがワイナリーです。その事業地域は北海道から九州まで全国におよび、中小規模の事業所が大半ですが、酒類製造という専門性の高い技術をピンポイントで習得しようという学生ですから、職務内容にはこだわっても、地域や会社の規模で就職先を決めるような学生はいません。
3年生になると、地方の酒造メーカーやワイナリーの長期インターンシップに出かける学生も少なくなく、そのまま内定にいたるケースもあって、毎年、全員、希望通りの就職を果たしています。
お酒に関連する資格としては、酒造技能士があります。所管は厚生労働省。1級と2級があり、学科試験では「清酒製造法」「微生物及び酵素」「化学一般」「電気」「関連法規」「安全衛生」の知識が、実技試験では「清酒製造作業」にともなう技能が審査されます。
技能士は、その職に就くために必須の免許状ではなく、職務技能に長けたプロであることを証明する資格ですから、その受験には実務経験が必要です。2級の場合は2年以上、1級だと7年以上が原則。1級は、酒造メーカーなどに勤務して杜氏を目指す人の目標資格となっているようです。
かつて酒造りはさまざまな熟練職人を必要としました。米を蒸す作業ひとつをとっても、原料の米の状態や天候によって火加減などを調整しなければならないからです。頼りになるのは職人の経験と勘。そのもとで実作業にあたる人手も必要でした。
そんな職人たちを束ねるのが杜氏です。昔の杜氏は蔵元の依頼を受けて仕事を請け負う個人事業主でしたから、時季がくると人を集めて蔵元に出向きます。酒造りのすべての工程に精通していることはもちろん、職人やその家族の生活を守る使命も負っているため、人徳や親方気質も欠かせませんでした。
発酵や醸造にまつわる化学的根拠が明らかになり、また、酒造メーカーの機械化も進んだことで、近年では、杜氏の雇用形態も変わりつつあるといいます。地域ごとに存在した昔ながらの杜氏文化が衰退する一方で、メーカーに勤務する社員杜氏もめずらしくなくなりました。
今回訪ねた醸造発酵コースには多くの女子学生が在籍していました。そういえば、ワインブーム、日本酒ブーム、芋焼酎ブームといったお酒のムーブメントを牽引したのも女性だったのではないでしょうか。もちろん、女性の杜氏もたくさん誕生しています。