東京の専門学校

都心の専門学校ならではの、特色ある学科やコースを取材

19-2

第19回 vol.2
建築監督科【4年制】
(後編)

専門学校東京テクニカルカレッジ
(東京都中野区)
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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全国から入学者を集める東京の専門学校にスポットをあて、教職員インタビューを通じてそのカキュラムに迫ります。今回は、建築監督の養成課程について、専門学校東京テクニカルカレッジ(東京・中野区)の杉本安雄校長と高瀬恵悟教務部長に伺っています。

――監督としての技量の獲得には、職場での経験やOJTこそ必要なのでは?

▲高瀬 恵悟教務部長

▲杉本 安雄校長

高瀬  建築監督が、特定の知識や技術を身につけさえすれば就ける職務でないことは確かです。机上でマネジメントの勉強をしても、それだけで会社の経営者になれるわけではないように、実社会とつながった中で経験を積む必要があります。

産学連携による建築監督の育成――私たちがめざしているのがこれです。知識や技術の教授を得意とする学校と、見本となる現役の監督がいるゼネコンが手を結んで、体験と学習のサイクルを確立させます。

建設会社で数か月にわたって現場を体験すれば、何をどう学べばいいのかがわかってくることでしょう。また、新しい課題に直面するかもしれません。それを学校に持ち帰って取り組んだり、学び直したりするわけです。そのための4年制です。

▲清水建設の研究所における風洞実験の校外学習

一級建築士をめざすこともできるカリキュラムですが、重視している資格は施工管理技士で、在学中に二級の1次試験に合格し、卒業後に監督としての実務経験を積んで2次試験に合格、将来的には一級資格をめざす人に適したカリキュラムにしてあります。

学校のイメージとしては、芸能スクールを思い描いてもらえればわかりやすのではないでしょうか。お笑い芸人になるには、かつてなら師匠に弟子入りして修行するのが唯一の道でした。それがいまではスクール出身の芸人が多くを占めるようになっています。

建設現場も、親方の元に弟子入りする徒弟制度が崩壊して、現場監督を育てる術が失われつつあります。それならば、専門学校の人材育成のノウハウをもとに、企業と連携してカリキュラムを整えれば、現代にマッチしたスマートで新しい人材育成システムができるのではないかと考えています。

▲授業風景

杉本  基礎的な知識と技術を定着させる授業については、2年制の既存学科で取り組んできた実績があります。東京テクニカルカレッジの授業は、すべて、授業シートを配布するところからはじまります。授業シートとは当日の学びのポイントを具体的に記した、いわば1コマごとのシラバスです。

そして授業が終わると、ポイントごとに理解できたかどうかを確認する簡単な振り返り試験が行われます。この試験の結果は、教員にとっては授業のあり方や、学生ごとの理解度を確認する資料となり、私たちはこれをカルテと呼んでいます。また、学生にとっては、ひとコマごとに学ぶ目的がわかるわけですから、学びやすいし、いきおい、勉強熱心になります。

併せて、社会体験を意識した「仕事場カリキュラム」という学びのシステムも導入しています。これは、企業から提供していただいた課題に、学年をまたいだチームを編成して取り組むプロジェクト型の授業で、上級生が下級生を指導する、OJTの実践にもつながります。

建築監督科では、4年制である利点を活かして、インターシップに加えて、この仕事場カリキュラムの充実も図っていきます。

▲同研究所にて無響室設備の体験

――高校生の段階で、建築監督を志望する生徒がいるのでしょうか。

杉本  2年制の建築科のケースでいうと、入学段階で大工になりたいとか、建築監督になりたいなど、施行現場での就業を志望している学生は1~2割にすぎません。残りはすべて設計志望です。

ところが、1年も経つと5~6割が施工を志望するようになる。学校で建築を広く学ぶうちに、自分の適性にも気づくし、施工を面白く感じるわけです。

▲模型制作

残念ながら、高校生でそこまで気づいてもらうのは難しいかもしれません。けれど、建築監督を求める業界のことや、その仕事について知ってもらうことができれば、潜在的な志望者を掘り起こせるはず。私たちが業界のスポークスマンになる必要があるかもしれません。

なかでも期待したいのが工業高校の生徒です。もともとものづくりが好きで、現場志向の生徒が少なくないでしょうからね。工業高校の先生方には、建設業界がのどから手が出るほどほしいという建築監督へのニーズを、ぜひ知ってもらいたいと思います。

Reporter's NOTE(建築監督科)

――学校とは、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする――

日本の学校制度の骨格を定めた「学校教育法」は、この条文からはじまります。それが第1条の規定であることから、幼稚園以下、大学までを「一条校」といったりします。読んでわかるとおり、そこに専修学校は含まれません。本企画(東京の専門学校)が取材対象とする専門学校とは、高卒者以上を入学対象とする専修学校専門課程のことで、一条校に含まれる高等専門学校(中卒者を受け入れる5年制教育機関)とは異なります。

専修学校についての規定は第124条以降。この違いが、専門学校が指摘する“格差”の根拠となってきました。専門学校は、私大をはじめとした私立の一条校に支給される、いわゆる私学助成金の対象外です。

一条校になること、それは専門学校の積年の願いです。しかし、法律の改訂には、強い社会的要請をもとにした政治的判断が必要です。大学に比べて少数派の専門学校が、いくら格差是正を訴えても、世論は動きませんでした。

ところがここにきて、専門学校の一条校化が現実味を帯びて語られるようになりました。杉本校長の話にもあった「職業実践教育に特化した高等教育機関」について、中央教育審議会キャリア教育・職業教育特別部会は、「大学・短期大学等と別の学校として検討することが適当」とする審議経過を報告しているのです。

近い将来、学校教育法の第1条に、職業実践学校(仮)などという名の高等教育機関が加わるかもしれません。そうなれば当然、それに相当する教育を行う専門学校の、職業実践学校(仮)へのシフトが考えられます。

今回取材した建築監督科が産学連携による教育に力を入れるのは、職業実践学校(仮)への布石に違いありません。中教審の審議とともに、同科の今後を見守りたいと思います。

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