東京の専門学校

都心の専門学校ならではの、特色ある学科やコースを取材

20-2

第20回 vol.2
幼稚園教諭・保育士養成科
(後編)

東京教育専門学校
(東京都豊島区)
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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全国から入学者を集める東京の専門学校にスポットをあて、教職員インタビューを通じてそのカキュラムに迫ります。
古くから卒業と同時に保育士と幼稚園教諭の両資格が取得できる学校として知られていた東京教育専門学校(豊島区)を訪ね、安西豪行校長と下岸幸子副校長にカリキュラムや卒業後の進路について伺っています。

――福祉施設での実習体験をきっかけに、幼稚園や保育所以外の進路をめざす学生もいますか。

安西  幼稚園や保育所に比べて募集が少ないため、卒業後すぐに施設に勤務する学生は少数派ですが、保育所などで経験を積んで、将来的に別の施設等で就業したいと考える学生はいるようです。

下岸  実習体験がきっかけかどうかはわかりませんが、小児科病棟などで実践されている院内保育に関心を抱く学生もいます。院内保育は、医療の知識等も必要なので、卒業後も勉強を継続して、いずれは医療の中で保育士として働きたいと思っているのではないでしょうか。

――目白幼稚園が隣接していますが、連携した体験学習の機会などもあるのでしょうか。

安西  学生全員が見学実習を体験します。また、いくつかの授業では、目白幼稚園に協力してもらって、体験を通して学ぶ機会を与えているケースもあります。

――入学者は高校からの直行組が多いですか。

下岸  4大や短大を卒業して、あるいは一旦社会に出た後で入学してくる学生も少なくありません。割合としては3~4割ぐらいの方が入学してきます。入学者の年齢や経歴は実にさまざまです。

なかには学費を稼ぐために社会に出て、お金を貯めて入学してくる学生もいます。こういった学生のモチベーションが高いのはいうまでもありません。

本校ではクラス単位で授業を行います。クラスの人員は40~50人程度で、担任制をとっています。あえて世代や経歴の異なる学生同士が交流できるようにクラスを編成して、刺激し合えるようにしています。これは大学や短大にない、専門学校ならではの特色ではないでしょうか。

また、今年度4月からの新カリキュラムでは、2年生後期は必修科目を少なく、選択科目を多くして、空いた時間に、保育現場(就職内定園など)での実践体験ができるように工夫したのも、本校の特色です。

――男子の入学者の割合は?

安西  おおよそ1割ほどですね。近年では男子を採用する幼稚園や保育所が増えているとはいっても、やはり圧倒的に女性の就業者が多いのが現実です。就職のことを考えると、無責任に受け入れることはできません。

下岸  男子学生の中には公立の幼稚園や保育所をめざすケースが少なくありません。公務員としての採用は、生活の安定にもつながりますね。公務員試験を受ける学生には、就職指導課が核になって、模擬試験など多くの対策を行っています。

また、民間に就職したあとで、公務員試験に再チャレンジする学生もいます。採用試験1次に合格して、2次の面接に臨む際に、本校を訪ねてきて面接指導を願い出る既卒者もいます。

学校としては、今後も在学者、既卒者とも、できる限り就職活動へのバックアップはしていきたいと思っています。

Reporter's NOTE(幼稚園教諭・保育士養成科)

東京教育専門学校の取材を終えた数日後、ある新聞に“幼稚園の助成廃止へ”の見出しが躍りました。報道の要旨は次のとおりです。

――政府は、「こども園」が創設予定の2013年をめどに、私学助成と保育所運営費を一本化して、「幼保一体給付(仮称)」とする方針を決めた。同給付を受ける施設は、入園を拒否できない「応諾義務」を負う。また、保育サービス料は国が定める「公定価格」に従わなければならない。――

私学助成は文部科学省から、保育所運営費は厚生労働省から支給されています。それを一本化すれば、二重行政による税金の無駄遣いの削減が期待できます。また、幼稚園に保育所の機能を持たせれば待機児童の解決策として有効なのは間違いないし、保育所が幼稚園の機能を持てば多くの入学前児童に教育の機会が与えられることになり、近年問題視される小1プロブレムの解決に、ある程度の効果を発揮するかもしれません。

そんな議論の中で発案された幼保一体化施設「こども園」でしたが、政府は、すべての幼稚園と保育所をこども園に移行する案ではなく、幼稚園、保育所、こども園が共存する案を採用し、その上で、給付金については上記の方針をもって国会で審議することを決めたようです。

先の新聞記事のサブタイトルは“こども園に誘導、反発も”でした。もしも、この政府案がそのまま国会をとおれば、この先私立幼稚園は、独自路線を貫く代わりに私学助成に相当する給付をあきらめるか、限りなく公立に近い園として再スタートするか、どちらか決断しなければないからです。

とはいえ、少子化が深刻であるにもかかわらず待機児童が増えているという矛盾は、日本の保育サービスが、すでに機能不全状態にあることを物語っています。

政治主導を訴えて政権を取った現政権には、文科省と厚労省の綱引きや業界団体の意見に惑わされることなく、幼稚園でも保育所でもこども園でも名前なんかどうでもいいから、年金にみたいに破綻しない、少なくとも場当たり的でない政策を講じてほしいと思うのですが、果たして、できるのでしょうか。

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