都心の専門学校ならではの、特色ある学科やコースを取材
23-2第23回 vol.2
インテリアデザイン科〔3年制〕
(後編)
(東京都目黒区)
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全国から入学者を集める東京の専門学校にスポットをあて、教職員インタビューを通じてそのカキュラムに迫ります。
実用性ばかりでなく、住居ならやすらぎや居心地の良さ、商業スペースなら購買意欲をそそるような空間を演出するインテリアデザインの概念が一般に受け入れられるには、そこに暮らす人々に、一定のゆとりが必要なのはいうまでもありません。
日本では、三種の神器といわれたテレビ、冷蔵庫、洗濯機が家庭にゆきわたった高度成長期以降ではないでしょうか。ところがそれと同時期、あるいはそれ以前に、インテリアデザインを教育する学校がありました。1963年創立の専門学校 ICSカレッジオジアーツです。まさにインテリアデザイン教育の老舗というにふさわしい同校を訪ね、インテリアデザイン科学科長の戸國義直(とくに・よしなお)先生に話を聞きました。
――大学の卒業学位が取得できるのですか。
1999年にイギリスの国立大学であるノッティンガムトレント大学との提携により実現しました。本校のカリキュラムが、同大のカリキュラムに相当すると認められたわけです。
インテリアデザイン科を卒業すれば同大からBA(Bachelor of Arts/学士号:日本の4年制大学卒業と同等の学位)が、インテリアデコレーション科を卒業した学生にはDiploma(準学士号:日本の短期大学・高等専門学校卒業と同等の学位)が授与されます。
もちろん、その認定にあたっては同大の審査を経る必要があります。なかには、本校は卒業できても、ノッティンガムトレント大学の学位認定基準に達しない学生もいますが、その場合でも、卒業制作だけをやり直す半期留年制度を設けてフォローしているので、ほとんどの卒業生が学位を取得します。
――日本人の学生はどのような企業に就職していくのでしょうか。また、就職に向けた学校としてのフォローアップは?
就職先は、アトリエ事務所やデザイン事務所、大手建築会社やその関連会社のインテリア部門のほか、自社製品の演出を手がけるメーカーのインテリア部門などさまざまです。
就職のサポートでは、カリキュラムの一環である企業研修があげられます。インテリアデザイン科であれば、2年次の後期5週間を使ってインターンシップを行います。これは必修の授業として行いますから、全学生が対象となり、この研修がきっかけとなって就職に結びつく学生も少なくありません。また、この研修をきっかけに自分の適性や会社との相性に思いをはせ、さらに他の会社での研修を申し込む学生もいます。
――インテリアデザインに対する今後の需要について、どのように見込まれていますか。
高度成長期に林立した団地型の住居で空きが出始めているのは周知の通りです。こういった建物をそのままスクラップにするのではなく、新たな魅力を与えてよみがえらせる取り組みも始まりました。また、高齢化が進んだことで、住空間のみならず、商空間でも福祉の観点から空間をとらえなおす必要も生じています。
知識や技能の裏付けをもつインテリアデザイナーによる良質の空間づくりが、今後は、さらに求められることになると考えています。
広辞苑に「室内装飾。室内調度品」と記されたインテリアが、この日本で、広く意識されるようになったのはいつの頃からだったでしょうか。高度成長で所得が増えた1960年代? 当時はまだテレビ・冷蔵庫・洗濯機が三種の神器といわれた時代です。それは装飾や調度というよりも、生活必需品の幅が広がったと言った方が適切に思えます。
60年代末から70年代にかけての3Cも同様。カラーテレビ(Color television)もクーラー(Cooler)もクルマ(Car)も、装飾や調度品への意識が高めたニーズではなく、便利で快適でリッチな、これまでになかったモノへの欲求と言えるでしょう。
インテリアへの意識の高まりは、これら物欲がほぼ満たされた80年代以降、そう、トレンディードラマが人気を博した時代と重なるのではないでしょうか。最先端のファッションに身を包んだ主人公が帰るマンションは決まって天井が高く、コンクリート打ちっぱなしの壁だったり室内に螺旋階段があったりして、生活感のまったくない空間でした。
いま考えても、いや、いま考えるとなおのこと、そこは浮世離れした空間でしたが、モノを手に入れることとはまた別次元の憧れを芽生えさせたという意味で、トレンディードラマの功績は大きかったのではないでしょうか。
ICSカレッジオブアーツの創設は1963年。一般のいわば庶民の間にインテリアの概念が普及する20年も前のことです。それが先見の明と呼ぶに相応しいことは本文にある通りです。以降、地道ながら、ぶれることなくインテリアデザイン教育を追求してきた姿勢は素直に評価されていいものではないでしょうか。同校が提携するノッティンガムトレント大学の日本語版ホームページ(//www.ntu.jp/)を見つけました。参考にしてください。