都心の専門学校ならではの、特色ある学科やコースを取材
24第24回
専門学校 職業実践専門課程
特色と活用法
企業と連携し就職がより有利に
職業実践専門課程2年目を迎えて
専修学校教育振興室長
白鳥 綱重(しろとり・つなしげ)氏
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今年、創設40周年を迎えた専修学校制度。高等学校卒業者等が入学するものを専修学校専門課程(「専門学校」)と呼んでいる。専門課程のうち、一定の要件を満たした課程について、文部科学大臣が「職業実践専門課程」として認定する制度が平成26年度から始まった。2年目を迎え、認定を受けた専門学校が全国で増えてきた今、改めてこの制度の趣旨について文部科学省生涯学習推進課専修学校教育振興室長の白鳥綱重氏に伺った。
専門課程に新たな枠組みを作り
職業教育の質の向上を図る
「この制度は高等教育における職業実践的な教育に特化した新たな枠組みづくりに向けた専修学校専門課程(専門学校)における先導的試行として実施されているものです。
企業との密接な連携により、最新の実務の知識等を身につけられるよう教育課程を編成し、より実践的な職業教育の質の確保に組織的に取り組む専門課程を文部科学大臣が職業実践専門課程として認定し、奨励します」
つまり職業実践専門課程は、専門課程に進学する生徒が、より最新の実務を学べるように工夫されたものであり、さらにそれを国が奨励することで教育の質の向上をはかるものである。
企業等と学校が組織対組織として協力
演習・実習最新の実務を学べることも魅力
一定の要件を満たし、職業実践課程として認可された学科は、以下の図表のような特徴を有す。(職業実践専門課程リーフレットから転載)
図表:職業実践専門課程の認定要件
①企業等が参画する教育課程編成委員会を設置してカリキュラムを編成
②企業等と連携して、演習・実習等の授業を実施
③企業等と連携して、最新の実務や指導力を修得するための教員研修を実施
④企業等が参画して学校評価を実施
⑤学校のカリキュラムや教職員等についてHPで情報提供
(引用:職業実践専門課程リーフレット)
ここには、企業等が参画・連携という文言が多い。これは何を意味しているのか、白鳥室長は話す。
「専門学校においては、就職実績の高い専門高校と同様に、学校教員と地元企業等との長年の付き合いなど密接な人間関係を築く中で、情報交換を行いながら、企業が求める人材を学校で育成して送り出すということが進められてきました。ただ、このような企業等とのつながりは、教員の個人的なつながりによる場合が多かったところです。
職業実践専門課程では、このような個人的な情報交換・情報共有等の実践を、組織としての取組にまで高めている点に特徴があります。つまり、企業等との連携や参画というのは、企業等と学校とが組織対組織のつながりになっていることを意味していて、例えば、実習・演習の実施に関していえば、協定書を交わすことのほか、学生の学修成果の評価について学校と企業等が連携し、カリキュラム編成に関しては、企業等の意見を聞く体制づくりとその意見の活用といったこともセットになっています」
つまり、どのような教育内容にするか、どういう実務が必要でどう訓練していくか、それらの取組と成果をどう評価するのか、学校の教員を企業で研修させることも含めて、あらゆる部分で企業等と連携させることを明確化した制度といえる。
ホームページでの情報公開が必須
公開することで教育の質を維持
質の高い教育を行うことで、学生の就職率を高めたり、より本人の適性にあった就職を促したりするのがこの制度のメリットであるが、教育の質をどのように維持していくのか。白鳥室長は今後の運用について説明する。
「職業実践専門課程は、文部科学大臣の認定を受けた時、つまり認定申請を行った時点での実施状況を確認するものであり、その後の状況に変化が生じた場合には、専修学校の設置認可権限を有する都道府県等から、文部科学省に届出が行われることになっています。
更なる質の維持・向上の確認方策については、定めがあるものではありませんが、情報公開や学校関係者評価などにより、適切に教育活動が行われているかについて、外部の目をしっかりと入れていく仕組みとしています。
文部科学省では、認定された職業実践専門課程が公表しなければならない様式も定めており、認定校は、中退率など、本来であれば学校が表に出したくないと考えられる情報も積極的に公表しています」
カリキュラムや教員の情報をインターネットで公開し、一般の人が閲覧できるようにし、誇大広告のような内容を公表することを防げるため、教育の質を維持する効果が見込まれる。現実には行われていない教育や名前だけ書かれている有名講師陣など、仮に虚偽や誇大広告のような記述があれば、学生や保護者など、情報を見れば分かるような仕組みがなされている。
専門学校全体の4分の1が認定
平成25年度は470校1,365学科、同26年度は295校677学科が認定され、平成27年2月現在の合計は673校2,042学科にのぼり、全専門学校数の24%、全学科数の25%となった。
職業実践専門課程は2年以上の課程のみが対象であるが、専門課程には2年に満たない学科も存在していることから、専門課程の全てが職業実践専門課程に認定されるわけではない。
しかし、開始2年でおおむね4分の1が職業実践専門課程に認定されていることから、今後もゆるやかに増えていくことが見込まれるのではないか。
白鳥室長は次のように話す。
「国の中央教育審議会が平成23年1月のキャリア答申の中で、学校教育段階ごとに行うべきキャリア教育・職業教育の在り方を示しました。その中において、高等教育における職業教育を充実させるための方策の一つとして、職業実践的な教育の新たな枠組みを進めていくという方向性が打ち出されたのですが、その先導的試行としてスタートしたものが、職業実践専門課程です。
専修学校は、今年で制度創設40年目という節目ですが、これからも充実した職業教育機関として発展していくものと考えています」
社会人の学び直しの場としての専門学校
職業実践専門課程なら助成金の支給も
白鳥室長は専門学校の今後の展望についてこう話す。
「専門学校は社会人の学び直しの場として、または生涯に亘って主体的に学べる場としても重要な教育機関であると思います」
職業実践専門課程は厚労省の教育訓練給付金の対象となっているため、雇用保険の被保険者として2年以上(初回受給の場合)であれば、授業料の40%(年間上限32万円)が支給され、それが就職に結びついた場合は更に20%が加算されて計60%(年間上限48万円)が支給される。
「給付金のことも含め、国は専門学校に関して、学生を支援するための様々な試行を重ねております。こうした情報もしっかり収集し、自分の目と心で確認して最適となる学校選びをおこなっていただきたいと思います」