全国の高校で実施されているキャリア教育の取り組みを紹介
第1回第1回
現在の高等学校におけるキャリア教育の実態
Part.1
文部科学省がキャリア教育を推進する背景
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文部科学省がキャリア教育を
推進する背景
1999年に中央教育審議会が答申した「今後の初等中等教育と高等教育との接続の改善について」は、学校教育と職業生活の接続改善のためのキャリア教育を求めた。
この背景には、近年、若者たちの間にフリーターやニート志向が広がり、また就職後三年以内に離職する新規学卒者も増加して、大きな社会問題になっているということが挙げられる。こうした状況は、厳しい経済情勢や産業・経済および雇用の構造的変化に伴っておこった部分もあると考えられるが、その一方で若者たちの勤労観・職業観の未熟さも指摘されている。
答申では、児童・生徒が明確な目的意識を持って日々の学業生活に取り組む姿勢、厳しい社会の変化に対応し、主体的に自己の進路を決定できる能力を身に付けられるように、小学校から段階的にキャリア教育をおこなう必要があると提言。
以来、全国の高等学校で広くキャリア教育が実施されるようになってきた。東京都が2006年度からすべての都立高校でキャリア教育を実施すると宣言したのを始めとして、さまざまな学校が独自の工夫を凝らした活動をおこなっている。
高等学校におけるキャリア教育が重要なものになっている現代にあって、「キャリア」ということばのとらえ方があいまいであるために、現時点ではまだ学校や先生たちの意識にかなりのバラつきがあるようだ。すでに何年も取り組みをおこなってきて、実績を挙げている学校がある一方で、とりあえず実施はしているものの、学校内のコンセンサスが得られず、かなり苦労しているという先生たちの声も数多く聞かれる。
文部科学省は「生徒が進路を主体的に考える力をつけることを目的としたキャリア教育であれば、いろいろなスタイルがあってもいい」というスタンスでいるように見受けられるが、今後は本来の主旨とあまりにも違う内容のものに関しては補正をかけていくことも考えられる。そうした動きの一つとして、近いうちに同省からキャリア教育の手引きが出されることが決定している。
このコーナーでは今後1年間にわたり、キャリア教育を実施して成果を挙げている全国の高等学校を取材し、紹介していこうと考えている。
次回からはまずその手始めとして、今年度の全国進路指導協議会の事務局長であるとともに、東京都立晴海総合高等学校で実際にキャリア教育をおこなっている千葉吉裕先生に、現在の高等学校におけるキャリア教育の実態について話を伺っていく。