高等学校とキャリア教育

全国の高校で実施されているキャリア教育の取り組みを紹介

第2回

第2回
現在の高等学校におけるキャリア教育の実態
Part.2
全国高等学校進路指導協議会
事務局長に聞く(1)

インタビュー
全国高等学校進路指導協議会 事務局長
千葉 吉裕氏
※組織名称、施策、役職名などは取材当時のものです
公開:
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文部科学省が推進する
キャリア教育を精査する

▲千葉 吉裕 氏

全国の高等学校で、どのようなキャリア教育が行なわれているかをお話する前に、まず「キャリア教育とは何か」ということをもう一度、精査しておく必要があると思います。

今の高等学校の現場では、「キャリア教育=職業教育」だと誤解している先生が非常に多いようです。その原因は、中央教育審議会がいわゆる「接続答申」(1999年)といわれるものにおいて、「学校教育と職業生活との接続」のための教育としてキャリア教育という言葉を使ったためだと考えられます。

しかし、その後、文部科学省は「キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議報告書」において、より詳しく説明を入れました。簡単に言えば、キャリア教育の目的は、「はたらくこと」「学ぶこと」への意欲を喚起し、「生きる力」を高めるということになります。

そのように理解できれば、キャリア教育は特に新しいものではないことがわかります。以前は、文部科学省が「モチベーションを高める」という表現をしていたものであり、「知識・技能の伝授ではなく意欲・関心を高める」という教育の先にあるものである。本質は同じなのです。

ただ、そこに今日的な問題を重ねてみたとき、近年、社会問題になっているフリーター、ニートの増加を解決するということが出てきて、そのためにもキャリア教育をやりましょうという流れが起こったというだけ。その根本にあるのは、目先のそういった問題を解決するためだけでなく、社会の大きな変化のなかで学校教育がどうあるべきかということも含んで考えられたものなのです。

キャリア教育は、
すべての高等学校においておこなわれるべきもの

ここでもうひとつ確認しておきたいのは、キャリア教育における「はたらく」という言葉の意味です。ここでいう「はたらく」とは、決して労働だけを指しているのではありません。もっと広く、たとえばボランティアや家事なども含まれるし、さらには、自発的な態度や内発的な動機付けを高めるということも含まれると考えられます。

そういう意味では本来、キャリア教育はすべての高等学校でやらなければいけないことなのですが、今のところ、そのコンセンサスができていない。非常に多くの教員が、単なる職場体験だという理解の仕方をしているわけです。そのため、進学校では「こんなものは必要ない」と言ってしまうようなことが起こっています。

また、現在キャリア教育を実施している学校の中にも、うちは職場訪問をやっている、外部から社会人を招いて講演を行っているというように、形だけでとらえて、本質的に子どもたちの内面を喚起するようなものになっていないケースが多々あるというのが現実です。

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