高等学校とキャリア教育

全国の高校で実施されているキャリア教育の取り組みを紹介

第16回

第16回
キャリア教育実践レポート
「かながわキャリア教育実践推進プラン」Part.6
神奈川県立光陵高等学校の実践例(2)

インタビュー
神奈川県立光陵高等学校
松本 哲教頭
統括教諭 戸田 崇先生
※組織名称、施策、役職名などは取材当時のものです
公開:
 更新:

普段の教育活動をキャリア教育の
視点でとらえることが大切

昨年度、本校ではこれらの取り組み・活動を学年別に表にまとめました。それによって、各活動でどんなことを学び、どんな力を身につけて欲しいのかが、教師にとっても、また生徒や保護者にとっても分かりやすくなったと思います。活動のなかには、当然、いま話したようなガイダンスも入っていますが、それだけではありません。普段の教育活動や学校行事の中にもキャリア教育の場としてとらえるべきものはあると考えています。

たとえば1年生になってすぐのホームルームでは新しい委員を選びますが、そこではクラスにおける自分の役割分担が明確にされ、役割把握・認識能力を養うことができます。また、本校は体育祭が非常に盛んな学校で、教員は関わらず生徒主導で自主的に運営されますが、これによって将来設計能力や人間関係能力が養われます。さらに本校の応援団は伝統の応援の型を持っていて、毎年2年生の応援団幹部が、自分が担当する1年生のクラスに行って全員参加でその型を覚えさせます。こうした機会を通じてコミュニケーション能力が養われます。

われわれはすべての学校行事・教育活動に関して、キャリア教育という視点で見たときにどういう意味があるのかを考えて整理し、一覧表を作成しました。それはキャリア教育とは特別なこと、新しいことを行っていくことが求められるものではないと考えたからです。今までやってきた教育活動の中に、キャリア教育的な視点を持ってどのように行っていくか、それが大切なのではないでしょうか。

本校は部活動加入率86.7%で、部活もとても盛んですし、ほとんどの学校行事は生徒が実行委員会を作って行っています。さらに進学のことも考えなければいけません。そうした中に、キャリア教育ということでさらに新しいことを盛り込んでいったとしたら、教員も大変になるでしょうし、生徒も消化不良を起こすと思います。それならば、今、光陵生が学校生活の中で大事にとらえているものの中に、キャリア教育の視点を持って行くのが一番いいだろうと。そう結論づけたのです。

この一覧表は教員用と生徒用の2種類作り、昨年度3月のキャリアガイダンスの事前学習のときに生徒たちに渡しました。そして、我々が1つひとつの活動でみんなにどういう力をつけてほしいと思っているかを伝えたのです。今年はモデル校に指定されて3年目になりましたが、1年目はラインナップを揃えた、そして2年目にはこういう表を作った。3年目にしてやっとここまで出来たというところです。

先輩からの話が
生徒のモチベーションを高める

今の形でキャリア教育を始めてからは、生徒からの評判も上々です。

社会人の話を聞いて「今までそういう職業があることを知らなかった」とか、「その仕事に就くためにはどういう能力が必要なのかわかった」と言う生徒もいます。あるいは「銀行業務というのはカウンター業務だけだと思っていたけれど、ある意味、会社の経営を助けるような仕事もあるのだということが初めてわかりました」とか。パイロットの話を聞いた子どもたちなどは「絶対にパイロットになりたい」と夢中になっていましたし(笑)。そういうふうに短絡的になるのはどうかとも思いますが、少しはそういう刺激があってもいいと思いますね。

何より、そうした話しを聞かせてくれるのが自分の学校の先輩なわけですから、生徒たちにとって、そこで聞く話は非常にリアリティがあるし、刺激になる。去年初めてこのキャリアガイダンスをやったときには、何人もの生徒が自分も将来、先輩たちのように自分がやってきたことを後輩の前で話せるようになりたいといっていました。その言葉が、生徒にとってあのガイダンスがどれだけ素晴らしい体験だったかを現していると思います。

こうした取り組みを始めて、我々が一番大変だと感じているのは、毎回ガイダンスのために何十人もの社会人、大学生、大学の先生との連絡、調整を行わなければいけないということです。ただ、本校のOB、OGは愛校心が強く、とても熱心に協力してくれるので、それに関しては非常に感謝しています。こうしたコーディネート作業は5名の教師によるキャリア教育推進チームで手分けして、1つのガイダンスにつき2人ずつペアを組んでやるようにしています。

今後の課題としては、自己理解の場をもう少し増やしていくことです。現在さまざまな形で他者理解の力をつけるための取り組みはしていますが、自己理解はまだまだ足りないと考えています。また、今やっていることの成果もどこかで検証しなければいけないでしょうね。近い将来きちんとやらないといけないということも感じています。

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