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進路や学部・学科選びのポイントを、センセイ・センパイにインタビュー。シリーズ3 大学・短期大学17学問系統別、大学の先生に聞く「学部・学科選択のポイント2」

Part.5

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語学・コミュニケーション

【学べること】総合語学、欧米圏語学、アジア圏語学、日本語、その他エリア言語、コミュニケーション学など

横浜市立大学 副学長(学術院担当)
キャリア支援センター長
岡田 公夫(おかだ・きみお) 教授
※組織名称、施策、役職名などは取材当時のものです
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進学先を検討する際、将来の目標や学びたいことを明らかにしたうえで、自分の希望にあった勉強・研究ができる進学先を探すことが重要だ。具体的に学部を検討してみると、同じ名称の学部はたくさんあり、大学によって学ぶ内容に特徴があることがわかる。では、どのような点に注目してこれらの学部を検討していけば良いだろうか。ここでは17の学問分野別に、大学の先生にインタビュー。自分にふさわしい学部を選択するコツ・ポイントについてアドバイスをもらった。

大学に入るということは、教わるということから自分でテーマを見つけて主体的に学ぶということへの転換。課題解決型の総合力を育てる教養教育とは。

▲岡田 公夫 教授

国際総合科学部には国際教養学系、国際都市学系、経営科学系、理学系の4学系があり、1学部ですが、国際教養学、経営学、会計学、経済学、理学、学術の6つの学位を出しています。1つの学部の中にいくつも学部を抱えている感じです。

1学部のメリットは、入学試験は4分野で入ってくるわけですが、2年になるときに他の分野に移動することもできるように設計されていることです。高校の時点で勉強したいと思った分野でも、大学に入ると別の専門の方が面白かった。経営がやりたいと思って入ってきても歴史が面白くなった、などということがあれば、他の学系に移ることができます。

また、他の専門の学生たちとも同じ学部の中で多様な交流が可能です。社会で要請されるのは狭い専門性ではなく総合力です。そういうところを狙っている学部なのです。

横浜市の大学という意味では、国際都市学系のまちづくりコースは、街の中にサテライト・ラボを設置して横浜市の施策などとも連携したさまざまなプログラムを行い、課題指向のコースとなっています。

横浜市立大学の教養教育がめざすもの

大学に入ったら何を勉強するかを明確にすること、つまり自分の課題を見つけることが重要です。横浜市立大学では入学するとまず共通教養を学びます。専門教育は専門教養と呼んでいます。専門課程と呼ばれている部分をあえて専門教養と名付けることで、より広い視野に立った教育を意識しています。

教養というのはいろいろに捉えられることばで、かつて大学の一般教養では幅広く学ぶこと、たとえば、文系の学生も理系の科目を、理系の学生も文系の科目を履修するようになっていました。大学で学ぶものには知識やスキルがありますが、私たちは、知識にとどまらない総合力こそ教養であると位置づけています。その中では、学生が関心、好奇心を持ち、いろいろな人と交流しながら関心を広げることが大事です。

共通教養の特徴的な科目のひとつが教養ゼミです。1年前期に置かれたこの科目では、医学部も含め全新入生が、学部、学科、学系や、さらに推薦、AO、留学生特別入試などの入試タイプ別に、各クラスに均等に配置されるようにクラス分けをし、文系から理系、医学、看護まで、分野の垣根を越えた30人の学生が1クラスで学びます。先生も分野の違う先生が2人つきます。

グループ活動や個人テーマの発表など、いろんな分野に関心のある人がいろんな発表をする中で、レポートの書き方などのスキルも身につけていく。そうやって自分が大学で何をするかという関心をきちんと作っていく、そういうクラスです。より多くの知識ではなく、自分のモチベーションをつくっていくというのが非常に重要なところです。

1年の後期には基礎ゼミというクラスがあり、2年になるとそれぞれの学系の専門教養ゼミが始まります。以後4年までずっと、10人程度の少人数ゼミに必ず入っている状態になり、そこで自分のテーマを見つけて学びたいことを勉強していきます。卒業論文が必修で、全員が卒論を書いて卒業します。そのため指導も徹底していますし、単位だけ取って漫然と卒業してしまうということはありません。

英語ができることがグローバルではない

横浜市立大学でもう一つ特徴的なのは「プラクティカル・イングリッシュ」です。国際総合科学部ではTOEFLで500点取らないと3年に進級できません。今はどの分野でも国際性が求められており、理系でも修士まで進むとアメリカや台湾の大学と合同で英語の発表会をやっています。結局最終的に英語が必要になるし、理系では研究などの基本が英語というのは事実です。

しかしグローバル時代に要求されるのは、課題解決能力や発信力といった私たちの教養教育で取り組んでいるようなものであり、英語ができるからグローバルという話ではないのです。

もちろん、可能性を広げるという意味では語学力はとても重要ですし、今や海外に出れば当然ですが、日本の企業の中でも外国人の方が働いているわけですから、英語はあくまでコミュニケーションツールとして必須になっています。そのため、「使える英語」を身につけるプラクティカル・イングリッシュなど、英語教育には力を入れています。

アメリカに留学して帰ってきた学生たちは、留学先の教育のシステムでしっかり絞られてくる。たとえば、週1回の授業の準備に毎回200ページも本を読んで準備していかなければならない。そうやってグローバル水準の大学教育を体験して帰ってくることに、価値があるわけです。そういう意味では、留学は是非してほしいと思うので、語学留学にとどまらず、きちんと留学先で科目を履修して帰ってくることが重要といえます。そのための環境づくりに私たちもさらに力を入れていかなければいけないと思っています。

留学を前提にするとTOEFLでも最低550点は必要になるのですが、本学で特にグローバルを掲げているのが国際都市学系のグローバル協力コースです。ここではコースの基幹科目の半分が英語で行われています。海外調査実習で国連に調査に行きますが、そのための事前学習も含め、1年かけて英語の論文をまとめるなど、英語で学ぶ教育が行われています。

高校生へのアドバイス

大学に入るということは、教わるということから自分でテーマを見つけて主体的に学ぶということへの転換です。高校までは正解のある勉強をやってきたのですが、大学に入ると答えのない勉強が始まるのです。

受験勉強をしていても、自分が何をやりたいかはなかなか分からないですよね。実際に大学に入ってみたら別のものがもっと面白かったなんていうことも起こります。そういう意味では、高校生までは基礎の勉強をしっかりやる。

大学に入って面白いことが見つかっても、基礎がないから動けない、というのは不自由ですよね。ならば高校生は高校生らしく部活も勉強もしっかりやって、自分が面白そうなところに入る。大学に入ったら、大学で何を学ぶかというテーマをしっかり見つけることが大事です。大学を、4年間通って就職する過程的な場所だと思うのは、もったいないと思います。大学で何を学ぶかを意識することが将来のキャリア形成につながっていくのではないでしょうか。

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