EYE's Journal

いま知りたい教育関連のテーマについて、ドリコムアイ編集部が取材・調査

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シリーズ1 教員を育てる
Part.4 
レポート②
実務家でなく専門家をめざす
学校教育高度化専攻のねらいとは(後編)

東京大学大学院 教育学研究科
佐藤 学 研究科長
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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カリキュラムの3分の1が「実践研究」

学校教育高度化専攻の最大の特徴として、「実践研究」の重視が挙げられる。その理由を佐藤研究科長は次のように説明する。

「専門家教育に必要なのは、理論と実践を高度なレベルで統合することです。そのため、カリキュラムの3分の1を実践研究にあてています。実践研究の中身は、事例研究と実地研究です。

学校や教育行政の現場で実際にどのようなことが行われているかを研究するとともに、現場に入り、実習やフィールドワークを含めて研究を積み重ねていきます」

教職開発コースを例に取ると、事例研究としては、授業実践の実例およびカリキュラム開発の実例について観察、記録、分析などを行う。

実地研究は、小学校・中学校・高校のうちいずれかの学校において2~3か月間の実習を行い、授業の実践とその評価、カリキュラム開発とその評価などに取り組む。この事例研究と実地研究は、東京大学の附属学校または協力学校で実施することになる。

また、教育内容開発コースも学校で事例研究と実地研究を行い、学校開発政策コースは学校か自治体で事例研究と実地研究を行う。

東京大学が蓄積してきた
研究資源をフル活用

学校教育高度化専攻の2つ目の特徴は、東京大学が蓄積してきた研究資源をフルに活用することだ。

「東京大学で最先端の研究に携わっている方々と、学校における科学技術の学習や数学の学習はどうあるべきかといったことを共に研究する体制をつくっています。東京大学がもつ知的資源、これまでの教育研究の蓄積を存分に生かすということです」

さらに3つ目の特徴として、他大学の大学院や全国の教育委員会などとの連携を重視していることがある。

「学校教育高度化専攻では、大学院における教育の専門家養成のモデルを提示したいと考えています。

しかし、それは東京大学だけで進めるという意味ではなく、全国に100近くある教育系の大学院や約380ある教職の課程認定を行っている大学院と連携して新しいモデルをつくっていきたい。同時に、文部科学省、都道府県・市町村教育委員会など行政との連携も図っていきたいと考えています」

このため、学校教育高度化専攻に附設するかたちで学校教育高度化センターを開設。ここを拠点として他大学院や行政機関と共同研究を進めていく。

初年度の応募倍率は3倍以上に

1学年の定員は、修士課程が各コース7人ずつ、博士課程が各コース4人ずつとなっている。

修士課程についていえば、学校教育高度化専攻の応募者は、東京大学の在学生、他大学の在学生、現職の教員・教育行政官という3つのグループに分かれている。このうち東京大学の在学生が約半数を占め、他大学の学生と教員・行政官は同程度の人数。専攻全体の競争倍率は3倍強になった。

「問い合わせ自体はもっとたくさんありました。しかし、財務省で専攻設置の予算が認められたのが12月、広報活動や願書配布が1月、試験が2月というスケジュールだったことを考えると、倍率が3倍以上になったのは幸先のいいスタートといえます。

現職の方は試験の準備をする時間がなかったのでしょう。今後は現職の応募者がもっと増えてくると思います」

動き出した学校教育高度化専攻。佐藤研究科長は「新しいチャレンジの始まりです」と話を締めくくったが、そのチャレンジの行方は、全国の教員、大学関係者、教育行政関係者の注目を集め続けることになりそうだ。

注:佐藤学先生の役職名は取材時点のものです。研究科長としての任期は3月までで、4月からは教育学研究科教授ですが、研究科長としてお話をうかがっているため取材時点の役職名で表記しています。

図1 学校教育高度化専攻およびセンターの概念図

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