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1-11シリーズ1 教員を育てる
Part.11
レポート⑥
教員研修モデルカリキュラム開発プログラムが始動
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独立行政法人教員研修センターは、大学と教育委員会の連携によって教員研修のモデルカリキュラムを開発する事業を2006年度から開始した。今回は、この事業の内容、進め方、事業に採択された大学のうち首都大学東京の取り組みを紹介する。
10年経験者研修と教育課題研修で
計18プログラムを採択
独立行政法人教員研修センターは、学校管理者研修、緊急の重要課題に関する研修など国として担うべき研修を実施しているが、2006年度から新事業として「教員研修モデルカリキュラム開発プログラム」を開始した。これは、昨年12月に中央教育審議会がまとめた「今後の教員養成・免許制度の在り方について」(中間報告)の中で、同センターにおいて、教育委員会や大学などとの連携により教員研修モデルカリキュラムの開発や実施方法の開発を行い、教育委員会などに提供することが必要、と指摘されたことを踏まえたものだ。
現在はモデルを提示している段階であるが、ゆくゆくは全国の教育委員会が実施する研修に役立ててほしいという思いがある。
同センターでは「10年経験者研修」と「今日的な教育上の重要課題に関する研修(教育課題研修)」の2種類について、大学からモデルカリキュラムを開発するプログラムを募集し、採択した大学に事業を委嘱した。
10年経験者研修モデルカリキュラム開発プログラムは2年間で実施。2006年度は大学が、教育委員会の実施する研修に協力しながら課題を整理し、カリキュラムを教育委員会と共同開発。2007年度には、開発したカリキュラムによる研修の実践、評価、改善などを行う。同センターからは、各年度ごとに300万円を上限とする予算が支給される。一方、教育課題研修モデルカリキュラム開発プログラムは単年度で実施し、400万円を上限とする予算が支給される。
プログラムの募集は昨年12月から開始し、今年2月に選考を行った。10年経験者研修は6件の応募があり、3件を採択。教育課題研修は20件の応募があり、15件を採択した。どちらのプログラムも、実施大学は年度末に成果を同センターに報告。同センターでは、成果を全国の教育委員会に提供する(10年研修の成果提供は2年度目終了後)。提供方法については、報告書の作成、全国の教育委員会関係者の集会での発表、ホームページの活用などを考えていて、現在、具体化に向けた検討を進めている。
首都大学東京は生物分野で
授業力向上や知識の深化をめざす
首都大学東京は、「独創的科学技術立国のための理科教員研修:生物でのモデル」を教育課題研修プログラムとして申請し採択された。これは、5年前から行っている高校教員向けの生物学公開講座などの実績を踏まえたもの。生物教育をモデルに、探究活動や課題研究も活用して、独創的な科学技術者の養成に結びつく教育ができる高校教員を養成する。
研修内容は4つのカテゴリーに分類し、合計9つの講座を用意している。
カテゴリー1は、参加教員間の交流や質疑討論を授業力向上につなげていくもの。講座は、①ティーチング技術(生物授業指導法)、②ティーチング技術(生物実験研究指導法)の2つ。
カテゴリー2は、実験・観察・課題研究などの授業での指導法を体験的に修得するもの。講座は、③ティーチング技術(生物実験指導法、課題研究の指導法)、④生徒実験指導法(植物の光センシングに関する簡単な実験と解説)の2つ。
カテゴリー3は、科学技術の最近の進歩を授業に取り入れるもの。講座は、⑤現代生物学リカレント教育。
カテゴリー4は、教える内容の高度で本質的な理解を通して魅力ある授業を実施するもの。講座は、⑥教員再教育のための専門講義(植物の発生と物質代謝)、⑦教員再教育のための専門講義(発生生物学と再生医学の接点)、⑧教員再教育のための専門講義(微生物分子生物学)、⑨教員再教育のための専門講義(古典遺伝学からゲノム科学まで)の4つ。
これらの講座は、①⑥⑦を前期、③④⑤を夏期、②⑧⑨を後期に分けて実施。前期と後期は、各講座を週1コマ(合わせて週3コマ)ずつ開講。夏期は各講座とも2日間に集中して実施する。実施場所は、前・後期は首都大が市民向け講座「オープンユニバーシティ」を開いている飯田橋キャンパス、夏期は南大沢キャンパス。
前期と後期の講座は、オープンユニバーシティおよび大学院の講座も兼ねている。このため、プログラムに参加している高校教員に加えて、オープンユニバーシティの講座を受講している高校教員、科目等履修生として大学院の講座を受講している高校教員にも、講座についてのアンケート回答や研究会参加などのかたちで、カリキュラム開発への協力を呼びかけていく。
プログラムとしては単年度で終了するが、もともと首都大の独自事業として計画していたものであり、来年度以降も同内容の講座を実施する。同時に、本プログラムを契機に東京都教育委員会との連携を強化し、講座の一部を都教委の研修に組み込んだり、共同で運営するなどの方向を探っていく方針だ。