EYE's Journal

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3-1

シリーズ3 高校における「奉仕」活動のあり方
Part.1 
東京都立高校の
「奉仕」必修化への取り組み
2007年度からすべての都立高校で「奉仕」を必修化

編集部
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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東京都は、2007年度からすべての都立高校において「奉仕」必修化を開始する。今年7月には「奉仕」カリキュラム開発委員会の報告書がまとまり、生徒用テキストも作成されるなど、実施に向けた準備は大詰めを迎えている。全国に先駆けた「奉仕」必修化は、何をめざし、どのように進んでいくのか。
今回のシリーズでは、東京都の「奉仕」必修化に向けた取り組み、考え方、具体的内容、先行的に実施している高校の実例などを紹介するとともに、「奉仕」についての文部科学省の方針、識者の見解などまで探っていく。第1回は「奉仕」必修化へ向けた東京都の取り組みについてまとめた。

東京都教育ビジョンの提言を受け
「奉仕」必修化への準備を進める

学校における奉仕活動については、2000年に教育改革国民会議の報告書のなかで、児童生徒全員が奉仕活動を行うようにすることが提案されている。中央教育審議会でも奉仕活動のあり方が検討され、奉仕活動を推進すべきであるとの提言があった。しかし、その後、奉仕活動の具体化に向けてとくに目立った動きはなかった。

そうしたなか東京都は、2004年4月に発表した「東京都教育ビジョン」の提言の1つとして、奉仕体験の必修化を打ち出した(*下記資料参照)。ここから、今回の都立高校における「奉仕」必修化が動き出すことになったのだ。2004年度の時点で、2007年度からすべての都立高校において「奉仕」を必修化する方針が決まり、2005年度からは具体的な準備活動が始まった。

2005年4月には、「奉仕」カリキュラム開発委員会を設置。委員会のメンバーには、学識経験者、都立高校校長、同副校長、同教諭などから5名、都教育庁から13名が選任された。同委員会の役割は、「奉仕」のカリキュラムを開発し報告書にまとめるとともに、生徒用テキストや教員用指導資料集の作成なども行うことだ。同委員会では2005年度、2006年度と「奉仕」カリキュラムについて検討を重ね、2006年7月に報告書をまとめている。

実践・研究校や試行校を指定し
活動成果を全都立高に提供

一方、2005年度からは一部の高校において、奉仕体験活動の実践・研究を進めることになった。2007年度からの必修化に向けて、その内容や方法などを研究し、成果を全都立高校に提供するのが目的だ。これらの高校は正式には「奉仕体験活動必修化実践・研究校」と呼ばれ、(1)パイロットスクール、(2)研究グループA、(3)研究グループB、の3種類に分かれている。

パイロットスクールは、奉仕体験活動をすでに学校設定教科・科目として設置し、単位認定を行っている高校で、10校が指定された。研究グループAは、単位認定は行っていないものの特色ある奉仕体験活動を実施している高校で、5校を指定。研究グループBは2005年度から奉仕体験活動の取り組みを推進していく高校で、5校を指定。実践・研究校の設置期間は2005年度と2006年度の2年間で、各年度ごとに研究成果の報告書をまとめる。

さらに2006年度には、実践・研究校とは別に「奉仕体験活動必修化試行校」を設置した。これは、必修化に向けて実践的な活動内容や方法を研究し、成果を全都立高校に提供するのが目的だ。試行校には20校が指定された。設置期間は2006年度1年間で、実践結果は報告書にまとめ、2007年1月までに提出することになっている。

東京都設定教科・科目「奉仕」は多様な活動内容を想定

東京都立高校における奉仕体験活動は、東京都設定教科・科目「奉仕」を設置して行うことになっている。この「奉仕」は、奉仕事前学習、奉仕体験活動、奉仕事後学習の3つで構成される。中心になるのは、もちろん奉仕体験活動だが、事前に奉仕体験活動の意義を理解することや、事後に振り返ることが重要になるからだ。

奉仕体験活動の内容は、多様なものになることが予想されるが、「奉仕」カリキュラム開発委員会の報告書では、例として図表1のような活動を示している。

各高校は2007年度以降、こうした例示も参考にしながら、それぞれの学校に適した活動内容を決定し、実施していくことになる。

*資料「東京都教育ビジョン」の提言(抜粋)

●奉仕体験・勤労体験の必修化

多感な時期の子どもたちに対し、規範意識や公共心を育成していくには、単に守るべき社会のルールやマナーを言葉で教えるだけではなく、実際の社会の中で、体験的に学ばせていくことが必要である。そこで、学校教育において、児童・生徒に対して、長期の社会奉仕体験や勤労体験等を義務付けることも検討すべきである。

奉仕体験や勤労体験等を通して、他人に共感し、社会の一員であることを実感し、また、社会に役立つ喜びや、勤労の大切さなど多くのことを体験的に学んでいく。

今後は、学校が地域と連携し、児童・生徒の奉仕活動・勤労体験活動を地域の中で意図的、計画的に行っていけるような仕組みをつくっていく必要がある。

図表1 奉仕体験活動の内容例

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