EYE's Journal

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3-2

シリーズ3 高校における「奉仕」活動のあり方
Part.2 
東京都教育委員会インタビュー
社会貢献の精神や方法を学べるように
全国で初めて「奉仕」を必修化

東京都教育庁指導部高等学校教育指導課
主任指導主事 上村 肇(かみむら はじめ)
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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東京都は、奉仕体験活動を東京都設定教科・科目「奉仕」として設定し、2007年度からすべての都立高校において必修化する。その背景や目的、奉仕体験活動のあり方、東京都教育委員会の支援策などについて、「奉仕」カリキュラム開発委員会の委員でもある東京都教育庁指導部高等学校教育指導課の上村肇主任指導主事に話をうかがった。

奉仕活動を体験的に学び 
社会貢献の意識を育てる

――東京都では、2007年度からすべての都立高校で奉仕体験活動を必修化するということですが、これまで都立高校における奉仕体験活動はどのような状況だったのでしょうか。

「平成17(2005)年度時点で見ると、都立高校のうち全日制では約9割が奉仕体験活動を実施しています。定時制の場合、時間的に難しいのですが、それでも約5割が実施しています。活動内容としては、保育園や学童クラブでの活動、通学路の清掃、地域行事への参加などが多いですね。ただ、この数字はクラス単位やボランティア部など一部の生徒が参加しているケースも含めたものです。また、必ずしも計画的、継続的に実施しているわけではないところもあります。ですから、奉仕体験活動の実施は意義のあることですが、課題も残されていたといえます」

――東京都設定教科・科目「奉仕」というかたちで必修化に踏み切ったわけですが、その背景やねらいを教えて下さい。

「現代の高校生を取り巻く状況を見ると、いろいろな課題があると指摘されています。たとえば、思いやりの心や規範意識を身につける機会が少ないのではないか。また、公共心といいますか、社会と積極的にかかわり、進んで社会に貢献しようという意欲や態度が十分に育成されていないという面もあります。そうした状況のなかで、社会に貢献する意欲、公共心などを育成していくには、実際に社会のなかで奉仕活動を体験的に学ばせることが重要です。

必修にしたのは、都立高校の生徒全員にそういうことを学べる機会をつくるためです。一部の生徒は、奉仕体験活動に取り組み、成果をあげているわけですから、それを全員に広げようということです」

奉仕活動を適切に行うための実践的な能力も重視

――奉仕の精神として自発性ということも大切なのではないかと思いますが、その意味で、奉仕は必修化に馴染むものなのでしょうか。

「たしかに、奉仕活動においては自発性も大切な要素です。ただ、奉仕の精神を理解して自発的に活動していけるようになるためには何らかのきっかけが必要です。そのため、すべての生徒に奉仕を学ぶ機会を提供することにしたのです。したがって、奉仕の精神と必修化に矛盾はないと考えています。

そういう意味もあって私どもでは『奉仕』と『ボランティア』を切り分けて考えています。『ボランティア』は自発的な意志で行う性格がより強くなりますが、今回は授業として行うものなので『ボランティア』という言葉は使わず『奉仕』という表現にしています」

――奉仕体験活動によって、具体的には生徒にどのようなことを身につけさせたいと考えているのですか。

「奉仕活動の精神や社会貢献の意識を身につけるということがありますが、奉仕活動を適切に行う能力を身につけることも重視しています。何らかの奉仕活動をしようと思っても、どんなふうにすればいいかわからないのではうまくいきません。どのように段取りをつけて、実際の場面に臨んだらどのように活動すれば目的を達成できるのか。そういうことを考え実行できる力を身につけ、育てていくことが大切なのです。奉仕活動をひと通り経験しておけば、ジャンルは違っていたとしても、活動するための見当をつけられるようになるのではないでしょうか」

東京都の各部局と連携して活動プログラムを開発

――東京都教育委員会では「奉仕」カリキュラム開発委員会を設置してカリキュラムなどを作成しているとのことですが、それ以外に、実施に向けてどのような準備をしているのでしょうか。

「いくつかありますが、たとえば『奉仕』推進者養成研修を夏前から10月にかけて行いました。これは東京都教職員研修センターが設定し、高等学校教育指導課から講師を派遣して実施したもので、都立高校の先生方が約300名参加しました。

それから、奉仕体験活動プログラムの開発にも取り組み、3つのプログラムを開発しました。

1つは、東京都港湾局との連携による海上公園ボランティアで、都内に42か所ある海上公園の環境美化や植物育成などを行うものです。

2つ目は、森林体験講座です。これは都立農林高校が青梅市などと連携して森林の下草狩りなどを行ったものですが、ほかの高校にも参加を呼びかけることになっています。

3つ目は、三宅島緑化プロジェクト事業への参画で、これは都立園芸高校が行いました。

こうしたプログラム開発は、ゼロから始めるのは難しいので、東京都の各部局などと連携して、すでに実施している事業と『奉仕』をつなぐかたちで開発することが大切だと思います」

実践・研究校の取り組み例から
活動のイメージを描く

――2005年度から奉仕体験活動必修化実践・研究校、2006年度には奉仕体験活動必修化試行校を指定して、必修化に向けた研究を進めているようですが、その成果は出てきているのでしょうか。

「試行校は今年度からなので、現在、取り組みを進めているところです。実践・研究校は2年間なので、2005年度の研究成果は報告書にまとめて年度末に提出してもらっています。その内容については、『奉仕』に関する副校長先生の会合の機会を利用して、広く全都立高校に呼びかけ、発表会を行いました。具体的な実践例を知ることで、同じ活動をするのではないにしても、こういう段取りで、こんなふうに進めていくんだというイメージを描くことができますから、参考にしていただけたのではないかと思います」

――現在、各高校では、「奉仕」必修化に向けてどんな準備をしているのでしょうか。

「来年度の計画をつくって10月までに提出してもらっています。まだ完全な計画ではないのですが、どのような活動をするのかということと、活動の連携先はどこかということは決めてもらっています。細部についてはこれから調整したり詰めていくことになるかと思います」

身につけさせたいことを明確化し
各高校に適した活動を

――来年度からの「奉仕」で各学校が成果をあげていくためには、どのようなことが大切になるとお考えですか。

「まず、各高校が生徒にどういう力をつけさせたいか明確にしておくことが大切だと思います。そして、それに適した活動内容を地域性や各校の特色も踏まえたうえで決定し、実施していくことですね。

それから、体験活動について、事前、事後の学習をしっかりやることも大切です。とくに事前学習で動機づけをして、活動に必要な知識やスキルも身につけ、きちんと準備をして体験活動に臨めば、質の高い体験ができるのではないでしょうか。体験活動が終わったら、事後学習で体験したことを振り返り、整理してみる。そして、たとえばグループごとにクラス内で発表するのもいいでしょう。せっかく貴重な体験をするわけですから、それを共有し見聞を広げることも大切です。

――来年度以降、東京都教育委員会としては「奉仕」に関してどのような支援をしていくのでしょうか。

「さまざまな広報活動が中心になると思います。そうした広報活動を通じて、都民の方に広く『奉仕』を知っていただき、たとえば体験活動の受け入れなど、いろいろなかたちでご協力をいただければと思っています。

それから、先程のプログラム開発と関連しますが、東京都で行われるいろいろな事業に奉仕体験活動として参加できるような機会をつくっていきたいですね。あとは、全都立高校の状況を見ながら、必要な情報を随時提供していくのが我々の役割だと思っています。

全国で初めて『奉仕』を必修科目として学ぶことになるわけですから、各学校がうまく『奉仕』の授業を展開していけるように支援して、ぜひ成果をあげていきたいですね」

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