EYE's Journal

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8-3

シリーズ8 専門学校の実力
Part.3
専門学校の就学支援
奨学金など多彩な制度で学びを支える

編集部
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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専門学校は、学生の経済的サポートにも積極的に取り組んでいる。入学時や在学中の経済的負担を軽くし、学生が安心して学べるようにするためだ。とくに、景気の落ち込みによって家計が厳しくなる中では、経済的サポートは強い味方になる。今回は専門学校の実力の1つとして、奨学金制度、特待生制度、働きながら学ぶ制度、学生寮などの就学支援について具体例を見ていくことにしよう。

学校独自の奨学金制度が充実 
入試に併せた採用選考が主流

専門学校では、日本学生支援機構(修業年限2年以上の課程が対象)などの公的な奨学金を利用することができる。さらに、それとは別に学校独自の奨学金制度を充実させているところが多い。

奨学金のうち返還の必要がない給付型の例を見ると、日本電子専門学校では「電子学園特別奨学生制度」を設けている。対象学科は全学科で、応募資格は入学を希望する「専願者で、学業成績・人物とも優れ、経済的事情を有する者」となっている。選考は、一次選考が書類選考(作文を含む願書など)で、一次合格者には二次選考として面接を行い、採用者を決定する。給付金額は50万円(1年制学科は25万円)。採用人数は若干名で、2009年4月入学者の場合は8名が採用された。原則として返還の必要がないのは大きな魅力だ。

返還をする貸与型の例を見ると、東洋美術学校では「育英奨学会制度」を設けている。出願資格は①同校が第1志望で入学が認められた人、②人物・学業とも優れている人、③経済的理由等により著しく就学が困難な人、となっている。定員は30名で、貸付金額は年間30万円まで(在学する科の修業年限まで)。この奨学金は無利子なのも特色の1つで、さらに在学中に優秀な成績を修めた奨学生は返還が免除される。

奨学金制度は、上記のように入学前に申し込むものが多いが、入学後の在校生を対象にしたものも数多く設けられている。

東放学園専門学校や東放学園映画専門学校などを運営する東放学園は「東放学園奨学金制度」を設けている。これは、2年次を対象に半期授業料に相当する学費を免除するもの。人物・成績、修学意志などから、提出書類および面接で採用を決定する。これ以外にも、同校の同窓会組織が2年次を対象に書類審査と面接で採用を決定する奨学金など複数の制度を整えている。

また、山野美容専門学校では、経済的な理由で修学困難な学生が2年次に利用できる「山野愛子奨学金」制度を設けている。入学後の成績などの条件があり、金額は50万円以内で無利息。採用人数は若干名となっている。

このように、専門学校はさまざまな奨学金制度を用意して就学を支援しているので、教育内容とともにぜひ詳しく調べてみたい。とくに入学生対象の奨学金は、募集が入学選考過程に組み込まれているケースも多いので、手続きをよく確認することが必要だ。

学費を減免する特待生制度は
学業や取得資格などで選考

特待生制度は、広い意味では奨学金制度の一種ともいえるが、高校生時代の成績や活動、入学試験の成績など何らかの選考基準を満たした学生について、学費の全額または一部の免除などを行う。採用選考は、通常の入学試験や特待生入試によって行うのが一般的だ。

たとえば、東京ビジュアルアーツは「特待生入学」の制度を設けている。これは、選考合格者が4ランクに分かれた特典を受けられる制度。Sランクは1年次の前期・後期授業料を全額免除(免除額86万円)、Aランクは1年次の前期授業料を全額免除(同43万円)、Bランクは1年次前期授業料の一部を免除(同10万円)、Cランクは1年次前期授業料の一部を免除(同5万円)となっている。募集定員は50名程度。募集学科は昼間部2年制全学科。一定の出願資格を満たしている者について、書類審査(調査書)、作文、面接で選考する。

華学園栄養専門学校や華調理師専門学校などを運営する華学園では、学園各校で学納金の一部を免除する特待生制度を設けている。応募資格は、一定の条件を満たした者で、①評定平均3.3以上、欠席日数が3年間で10日以内の現役高校生、②上記①に達しない者、③高校既卒者、と分かれている。免除額は、①が10万円、②が5万円、③が5万円。募集人員はそれぞれ若干名。選考方法は、面接と筆記試験(国語・数学)となっている。 

日本スクールオブビジネスでは、資格や経歴による特待生制度を設けている。これは、28種類の資格や経歴を設定し、その条件を満たしている者に対して入学金や授業料の免除を行うしくみ。免除額は、資格や経歴の種類によって、①入学金および授業料、②入学金および授業料の半額、③入学金、④入学金の半額、と4段階に分かれている。このうち①の入学金および授業料が免除されるのは、司法試験の1次試験合格者、日本商工会議所簿記検定1級または全国経理教育協会簿記能力検定上級、経済産業省応用情報技術者試験の3種類。選考は原則として書類選考となる。

こうした特待生制度を設けている学校は多く、しかも奨学金制度と併せて設けていることが少なくない。自分に適した制度はどれなのか、制度の併用はできるのかといったことをよく調べたうえで申し込むことが大切だ。また、特待生制度も選考は入学試験と組み合わせていることが多いので、手続きについて細かく確認することが欠かせない。

学費納入を先に延ばせる制度や
学校がローンを保証する制度も

専門学校では、奨学金や特待生以外にさまざまな金銭的サポート制度を設けているところがある。

HAL東京は「提携企業学費免除制度」を設けている。これは、提携する企業が同校から優秀な人材を発掘し、採用する目的で開始されたもの。4年制コースの4年で学ぶために必要な1年間の学費全額が企業から奨学金として支給される。卒業後はその企業に就職して4年間以上勤務することが条件となり、返還の必要はない。3年在学中で制度利用希望者を学内選考のうえ各企業に推薦し、企業での面接などによって採用が決定する。広い意味では奨学金の一種だが、学校からでなく就職を前提に企業から支給されるのが特色だ。

日本スクールオブビジネスでは、学費延納制度を設けている。これは、入学金を除く学費の半額を限度として、納入を先に延ばすことができるもの。納入方法は、①1年次前期と後期の延納金は1年次の2月までに納入し、2年次前期と後期の延納金は2年次の2月までに納入、②延納金を卒業後2年の間に納入、と2つに分かれている。延納制度の採用枠は、①②とも10名程度。申し込みは出願時に所定用紙を提出する。選考は先着順に随時、書類審査を行う。

大原簿記学校などを運営する大原学園では「大原自力進学制度」を設けている。これは、国の教育ローンや同学園が提携する教育ローンなどの利用が難しい場合に、同学園が保証人となって学費の借入をしやすくする制度。返済は、在学中は毎月の利子のみで、卒業後に元金と利子を合わせたものを分割で毎月支払っていく。選考は、一次審査として「特別奨学生試験」を行い、その合格者を対象に二次審査として書類審査と面接審査を行う。

また、学校の在校生や卒業生の家族や関係者を対象に学費の一部免除などを行うところもある。

織田栄養専門学校や織田調理師専門学校などを運営する織田学園では「ODA特別推薦制度」を設けている。これは、同学園の在校生・卒業生の紹介で入学を希望した場合、入学金の全額または半額を免除するもの。在校生・卒業生の二親等まで(一般的には子ども、兄弟姉妹までとなる)の場合は入学金の全額、親戚・知人・友人の場合は入学金の半額が免除される。

働きながら通学する制度で自力進学も可能に

学校が用意している奨学金などとは別に、自力で働きながら専門学校に通いたいという人もいる。そうした人の希望を支援するために、企業と提携してアルバイトなどができる制度を設けているところもある。

たとえば、日本ホテルスクールでは「国内ホテル研修制度」を用意している。これは、同校と提携しているホテルの社員寮に入り、働きながら通学するシステム。ホテルでの勤務は、昼間部は下校後から23時ぐらいまで、夜間部は登校前の5~8時間程度になる。定員は、各ホテルとも数名で、全体で60名。寮費は月1万円程度と安く、食事も勤務時間に応じて社員食堂を利用できる。なお、これはパート2で取り上げたデュアルシステムとは違い、学生の経済的サポートを目的とした同校独自の制度だ。

聖徳調理師専門学校では「進学・就職制度(アルバイト進学制度)」を設けている。これは、昼は同校で学び、夜などに同校が提携している飲食関連企業で一定時間以上働く制度。企業からの奨学金を利用したり、企業の寮に入ることも可能だ。ある企業の例を見ると、勤務条件は月80時間以上(週5日勤務で、1日は4~5時間が目安)。奨学金は30万円で、卒業後1年以上勤務すれば返済不要、その企業に就職しない場合は全額返済となる。

こうした制度を採り入れている専門学校も多い。もちろん、働きながら通学するのは大変なことだが、経済的な理由で進学を断念することなく自分の将来を切り開くことができると同時に、学ぶことに関連した仕事から生きた知識・技術を得られるのは大きな魅力といえるだろう。

住まいのサポートにも取り組み 
直営の学生会館や寮を備える学校も

専門学校は、住まいのサポートにも力を入れている。進学のために自宅を離れて暮らす場合、経済的負担は少ないものではない。なかでもウエートが高いのは住まいにかかる費用で、首都圏なら家賃だけでも月5~6万円(立地や条件によってはそれ以上)は必要だ。

さらに、光熱費、食費、活動費などを考えると、低めに見ても月10万円程度の出費は見込んでおく必要がある。そこで専門学校は、住まいにかかわる経済的負担を少しでも減らす制度を用意しているのだ。

住まいの支援で多いのは、提携学生寮を用意するとともに、入居契約時の費用や毎月の寮費の一部をローンで支払えるしくみを整えているものだ。

東京眼鏡専門学校の例を見ると、契約金ローンは契約時には保証金だけを支払い、入寮費(1年契約の場合は15万円前後)と年間管理費(20万円程度)は入居月から分割で支払うことができる。館費(寮費)ローンは、毎月の家賃負担を3万円軽減し、その軽減分は寮の契約満了後から分割で支払うことができる。当面の負担を抑え、学生生活が軌道に乗ったり、経済的に余裕ができるような段階から計画的に支払っていけるのがメリットだ。

一方で、直営の学生会館などを整備しているところもある。たとえば、日本ホテルスクールは2009年春に、千葉県浦安市に新築の学生会館を完成させた。この学生会館は女性限定。ワンルームマンションタイプの個室が78室あり、電化製品や備品もそろっている。会館費は月3万8000円だから、一般のアパート・マンションに比べるとかなり安い。また、管理人が常駐しているなど、安心して住めるのも魅力の1つだ。

トヨタ東京自動車大学校では、定員200名と122名の2つの寮を備えている。2人部屋だが部屋自体は広く、ベッド、机、タンス、エアコンなどを完備。室料は2万円弱なので、経済的な負担は非常に軽くなる。また、居室以外に学習室、フィットネスルーム、広い浴室、洗濯室などがあり、生活に必要な環境が整っている。

ここまで見てきたように、奨学金から住まいのサポートまで、専門学校は学生の就学支援でもその実力を発揮している。こうした支援を上手に活用すれば、経済的な負担を軽減しながら学ぶことも可能になる。関心のある学校がどのような就学支援をしているのか、学校案内やホームページでチェックしたり学校見学時に確認したうえで、合理的な進学計画を立ててみることが大切だ。

《Part.4 につづく》

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