都心の専門学校ならではの、特色ある学科やコースを取材
1第1回
プロローグ
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2005年度の「学校基本調査」によると、全国の専門学校生695,608人のうち171,982人が東京の専門学校で学んでいる。その割合24.7%は、短大を除く大学の同様の割合(24.1%)を上回る。対して東京に開設する専門学校数は403校で、全専門学校2,973校の13.6%。こちらも決して低い数値ではないが、学生数に比べればずいぶん低い。
この《東京の専門学校》では、学校数においては全国の8分の1程度ながら、4分の1にも相当する学生が集う東京の専門学校を取材して、専門学校教育の中身を見つめる。第1回目の今回はそのプロローグ。「学校基本調査」をもとに、専門学校の特徴や、東京の地域性を探ってみた。
全国と東京で異なる
人気の「関係」「分野」
「全国」と「東京」の専門学校在籍者数を関係別に分類した2つの円グラフ(図表1・図表2)を用意した。見比べてみると、東京の特徴がよく分かる。
注目してもらいたいのは「文化・教養関係」在籍者の割合だ。全国17.6%に対して東京は29.1%。「文化・教養関係」の人気の高さが東京の専門学校の最も大きな特徴といっていいだろう。その在籍者50,105人は、全在籍者(122,710人)の40.8%を占める。
文化・教養関係は「音楽」「美術」「デザイン」「茶華道」「外国語」「演劇・映画」「写真」「通訳・ガイド」「動物」「法律行政」「スポーツ」「その他」の12分野からなり、その学ぶ内容は多岐に渡る。
別掲の棒グラフ(図表3)の通り、「音楽」「外国語」「演劇・映画」「通訳・ガイド」の4分野で、東京の在籍者が5割以上を占めている。なかでも「演劇・映画」は7割以上が東京。5割超の「音楽」を含め、芸能関係の企業がひしめく地域性に根ざした傾向といえるだろう。
同様に、4割超の「デザイン」「写真」の卒業後の就職先である出版、編集、広告などの関連企業も東京に集中している。出版や広告は、東京の数少ない地場産業である。
語学系や服飾系の東京集中は
全国区の有名校人気の影響か
語学系専門学校の在籍者も東京が5割以上を占めている。「外国語」が56.1%、「通訳・ガイド」に至っては62.5%。全国区の有名校の存在が見逃せない。
全国規模で3.6%、東京においても6.2%と小規模であるためあまり目立たないが、「服飾・家政関係」の在籍者の多くも東京の専門学校に通っている。全国の25,333人中10,654人が東京。その割合は42.1%である。
「服飾・家政関係」の分野別在籍者を表(図表4)にまとめた。
見ての通り、東京では「家庭」「料理」「編物・手芸」の在籍者はゼロ。「家政」分野もひと桁である。その一方で、主力分野である「和洋裁」だけは、東京の占有率が48.3%にまで上昇。語学系専門学校と同じく、東京に全国区の有名専門学校が開設する分野である。
慎重に検討したい、専任教員数の比較
東京の専門学校の教壇に立つ全教員数は26,650人で、うち、本務教員は8,267人。残りの18,383人が教員以外に仕事をもつ兼務教員で、全体の69.0%を占めている。
大学を検討する場合、専任教員の数や割合を参考にすることがある。専任教員だからこそ学内での長時間勤務が可能で、その分、いわゆる面倒見のいい教員が多いというのがその主な理由だ。
しかし、近年では、特に経済学や経営学、国際関係学などの分野で、実務を経験してきた実業家・実務家を教員に招く大学も増えてきた。研究室の中だけの研鑽では限界があるということかもしれない。
対して専門学校は、以前から現役実務家を講師に招へいするなどで、実際の職場と深く連携してきた実績をもつ。その分、いわゆる専任教員は少ないケースも多いが、それがすべてマイナスというわけではなさそうだ。
これまで雑誌「ドリコムアイ」を通じて多くの専門学校を取材してきたが、兼務教員を慕う学生が決して少なくなかった。また、兼務教員のコネクションで就職を決めたというケースもあった。本務教員や兼務教員の数や割合を参考にする場合は、大学と同じ目線で見るのではなく、専門学校の関係や分野の特性と照らして検討する必要があるだろう。
全国の専門学校に勤める教員151,732人中の兼務教員は109,956人。その割合は東京よりも高く72.5%を占めている。
次回以降、全国から学生を集める東京の専門学校を訪ね、カリキュラムのモデルケースを探ってみることにする。