都心の専門学校ならではの、特色ある学科やコースを取材
6-2第6回 vol.2
声優・アナウンス専門課程
(中編)
(東京都港区)
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音響芸術専門学校(東京都・港区)は、2007年4月、主に声を使った仕事のプロ育成を目的に「声優・アナウンス専門課程」を開設しました。中編では見上陽一郎副学校長と声楽家の笠井仁先生に、カリキュラムや授業内容についてお伺いしました。
――1年次のカリキュラムは基礎力重視ということですが、たとえばどのような授業が組まれているのでしょうか。
笠井 私が担当する『ボイストレーニング』は、正に基礎中の基礎を指導する授業です。声を使う仕事に就きたくて入ってきた学生ですが、声の出し方、使い方がわかっているわけではありません。今年の入学者だと、学校のクラブ活動などで合唱をやっていたという者が2人だけ。あとは全員まったくの初心者です。
声優などの声を使う仕事は、単に声がいいとか面白いとかで務まるものではありません。きちんと出す、あるいは大きな声を出すテクニックを身につけておかないと、声帯を壊しかねませんからね。
――どういったトレーニングをされるのですか。
笠井 簡単にいうと、喉ではなく身体を使って声を出す訓練です。声帯というのは男性で13ミリ、女性だと9ミリしかない小さな筋肉です。わずかこれだけの大きさしかないわけですから、無理や無茶をするとすぐに壊れてしまいます。
こういった理屈をまず理解してもらって、声帯を鍛え、身体で大きな声を出すように、たとえば体操なども取り入れてトレーニングしています。
声優になりたい学生だからといって、決して目立ちたがり屋ばかりではないんですよ。むしろ、控えめな子が多いくらいで、恥ずかしさもあって、最初はまったく声が出ませんでした。でも、トレーニングを積むと、日増しにきちんとした大きな声が出るようになっていきます。その上達の速さは、私も驚くほどです。
――後期からはどのような授業を進めていく予定ですか。
笠井 ボーカルアンサンブルを加えようと考えています。ゴスペルのようにパートに分かれて、正しい声の出し方で歌う訓練です。パートは二声からはじめて、三声、四声くらいまでステップアップさせたいですね。こういった経験を通して、声を出すことがもっと楽しくなると思います。また、表現力も身につくと期待しています。
――ほかにはどういった基礎力トレーニングが行われているのでしょうか。
見上 それぞれの講師の方がそれぞれの方法で、基礎トレーニングを実践してくださっています。たとえば『ソルフェージュ』。これは楽譜が読めるようになったり、音やリズムがとれるようになる訓練。俳優の佐野浅夫さんが担当する『演習・語りの世界』ではナレーションを通して発声や発音、滑舌といった基礎を学びます。
大山学校長の『演習・演技の基礎』はその名の通りお芝居をするための基礎。前期の段階ではやはり発音や発声のトレーニングに多くの時間を割いているようです。
ほかにも『共通語の発声発音』『アナウンスの基礎』『演習・演劇研究』、それに『ダンス』の授業も用意しています。
――すべての学生が同じ授業を受けるのでしょうか。
見上 2年になると、声優・アナウンス専門課程のもとに設けた声優・ボーカリスト科、リポーター・アナウンサー科、俳優・タレント科に分かれて学びますが、その基本が、発声や発音といった声にあることは共通です。基礎を磨くことに主眼をおく1年生の前期の段階で、分かれて学ぶ必然性は見いだせません。
それに、基礎といえども高校までとはまったく違う専門の勉強をするわけです。体験して何かに気づき、進路を変えたいと思う学生がいるかもしれません。そういったことにも柔軟に対応できるように、1年生のうちは共通のカリキュラムにしてあります。
《つづく》