都心の専門学校ならではの、特色ある学科やコースを取材
8-1第8回 vol.1
写真科
(前編)
(東京都渋谷区)
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全国から入学者を集める東京の専門学校にスポットをあて、教職員インタビューを通じてそのカキュラムに迫ります。
広告・出版業は東京の地場産業のひとつです。その媒体制作にはフォトグラファーやフォトクリエーターが欠かせません。東京・渋谷という土地柄に根づき「写真」をテーマに、その技能を育成する「日本写真芸術専門学校」を訪ね、講師としてカリキュラム編成にも携わる長坂大輔先生にお話をお伺いしました。
フィールドワークを通して
写真と向き合う学生たち
――2年制と3年制の課程がありますね。どのような違いがあるのですか?
将来に結びつけて写真のテクニックや知識を学ぶという意味では、両者に大きな違いはありません。ただ、目標とする将来や、写真とのかかわり方が異なります。
コマーシャル、ドキュメンタリー、スポーツといったカテゴリーのほか、写真批評の能力を身につけるフォトクリティーク、デジタル表現の技法を学ぶフォトレタッチなど、それぞれの将来設計に合わせた「12のゼミ」で専門技能を修得するのが2年制。ゼミは2年生進級時に選択します。
それに対して、3年制には「フォトフィールドワーク」と「フォトアート」の2つのゼミがあり、その選択は入学時に行うシステムになっています。
フォトフィールドワークは、その名の通り、屋外での活動をカリキュラムの核に据えたゼミです。1年次に基礎的な技能を身につけ、2年次で国内フィールドワーク、3年次で海外フィールドワークを体験します。海外フィールドワークは約半年間におよぶ長期の取材活動です。事前にそれぞれの撮影テーマを決めた上で、アジアの国々を巡ります。
フォトアートゼミは、写真作品の表現技法を追及したいと思う学生のために開かれたゼミです。
カメラのレンズは常に外側を向いていますが、写真に投影されるのは単なる風景とは限りません。レンズの向こう側の世界に、撮影者の意思や心が写し出されたとき、写真は作品とよばれるようになります。
フォトアートゼミでは、単に写真を撮る技術を身につけるのではなく、見る者に訴える写真作品をテーマにしたカリキュラムを編成しています。たとえば写真公募展で審査委員を務める写真家の方々を招いて、学生の作品を講評していただくワークショップを数多く開催します。また、学生には公募展への応募や個展の開催を促し、その作品制作に向けたサポートもしています。
いろいろなゼミの中から一番関心のあるジャンルを選んで、写真業界への進出をにらんだのが2年制。そして、写真作家の育成を目的としたのが3年制。そう理解してもらえばいいと思います。
――半年間もの海外フィールドワーク期間中、学生はどのように過ごすのでしょうか。
要所ごとに集合場所と時間を定めるほか、マレーシアに設けた本校施設でスクーリングを行いますが、それ以外は、学生各人がそれぞれの撮影テーマにそって組んだ行程に則って行動します。
行程は講師や教員、旅行会社などのアドバイスのもとで計画するので、危険な地域に出入りすることはありませんが、それでも180日にもおよぶフィールドワークです。すべてが計画通りに進むとは限りません。何らかのトラブルで計画を変更しなければならないこともあります。
もちろん、海外フィールドワーク期間中は引率の講師がおり、学校との連絡も密に取れるようにしてあります。しかし、海外での取材活動では「思いがけないこと」などあるでしょう。不測の事態をどう乗り切るか、それも貴重な体験になると考えています。
訪ねるのは台湾、ベトナム、カンボジア、タイ、マレーシア、インド、ネパール、中国、韓国の9か国と地域。その過程で撮影した写真や時々の思いをつづることのできるブログを用意して、順次アップできるようにもしてあります。学校のホームページにリンクして公開してありますので、ご覧いただければ彼らの行動がよくわかると思いますよ。
《つづく》