都心の専門学校ならではの、特色ある学科やコースを取材
14-2第14回 vol.2
環境・バイオ科
(後編)
(東京都大田区)
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全国から入学者を集める東京ならではの専門学校にスポットをあて、教職員インタビューを通じてそのカリキュラムに迫ります。
今回は日本工学院専門学校(東京都大田区)の環境・バイオ科科長の福田守先生に聞いています。
――2コースの選択は入学段階で行うのですか。
コースの最終決定は1年次の後期に行い、分かれて学ぶのは2年生になってからです。ただ、化粧品と環境は、それぞれに特徴的な分野ですから、多くの学生は入学時から進むコースを決めているようです。
もちろん、1年次に身につける基礎科学の知識や分析機器の使い方は共通ですので、入学段階で決めかねている人であっても、また、進級時に進路変更しても問題はありません。
――分析や評価の面白さを知って、大学や大学院に進みたいと思う学生もいるのではないでしょうか。
日本工学院には「インターンシップ」という制度があります。一般にインターンシップというと会社などでの就業体験を意味しますが、この場合は大学の研究室を体験するインターンシップです。東京工科大学という姉妹校をもつ強みを生かした制度ですね。研究室を体験して、大学に進みたいと思う学生は、東京工科大学の3年次または2年次に編入することができます。もちろん、その後に大学院に進むこともできます。
――公害防止管理者のほかに、取得できる資格はありますか。
環境バイオコースは環境測定分析士にも対応したカリキュラムを編成していますが、これはかなり高度な資格です。在学中の取得をめざす学生もいますが、就職した後も勉強を続けて取得するというのが現実的かもしれません。また、化粧品製造所責任技術者は、化粧品の製造者や輸入者に設置を義務づけられた資格で、こちらについては環境・バイオ科で開設する規定科目を履修していれば、コースに限らず取得できます。
同様に、環境社会検定、ビオトープ管理士、有機溶剤作業主任者、特定化学物質等作業主任者、毒物劇物取扱責任者、危険物取扱者、環境測量士も、コースを越えて取得可能。化粧品開発者に有効なカラーコーディネーター検定や色彩検定などの取得もサポートしています。
ヒトゲノムの解読が宣言された2003年以降、ゲノム解析はさらに進み、ヒトゲノムの99.9%が人類に共通であることを明らかにしました。個人や人種による差は0.1%。このわずかな差の中に、たとえば発病や薬効を左右する個人差の秘密が隠されていると考えられるようになりました。
「化ける」「粧(よそお)う」と書く通り、かつての化粧品は、もっぱら素肌を隠すために用いられたのでしょう。しかしいまでは、肌のはりや潤いを保つために有効な成分が発見され、アンチエイジングや若返りを目的とした製品の開発が進んでいます。さらに進んでヒトゲノムの個人差にも対応できるようなれば、老化予防は一段と進むことでしょう。
ゲノム研究はすでにポストゲノム時代に突入しました。ヒトゲノムの個人差に働きかけて病気を治したり予防したりするオーダーメイド医療がにわかに現実味を帯び、薬品メーカーに注目が集まります。同時にポストゲノムは、アンチエイジングに向けた研究を進める化粧品メーカーの未来も開くと考えられています。
いまはまだ、女性をターゲットに開発される化粧品ですが、近い将来、ポストゲノム研究の成果を取り入れた個人差に応じた成分で、飲むのではなくつけるサプリ的な役割を担うようになるかもしれません。
あるようでなかった化粧品の専門学校。今回訪ねた日本工学院専門学校においても、まだ環境バイオコースと並ぶひとつのコースに過ぎませんが、その技術者が、今後さらに求められるようになることは十分に予測できます。いずれ学科として独立しても不思議はありません。
取材・構成:田中俊亘(教育ジャーナリスト)