都心の専門学校ならではの、特色ある学科やコースを取材
16-1第16回 vol.1
特殊造型専攻〔メイク学科〕
(前編)
(東京都千代田区)
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全国から入学者を集める東京の専門学校にスポットをあて、教職員インタビューを通じてそのカキュラムに迫ります。
テーマパークやイベント会場に展示されたモンスターは、いまにも動き出しそうなくらいリアルです。テレビや映画の中では戦隊ヒーローが怪人と戦います。見事に再現された動物人形を使って撮影した実写版のドラマもあります。こういったモンスターや動物などをつくるのが特殊造型士。ハイビジョン時代のいま、より精巧な造型テクニックが求められるようになりました。特殊造型の技能をカリキュラム化した東京ビジュアルアーツ(東京都千代田区)のメイク学科を訪ね、学務部の橋本邦比兒部長に話を聞きました。
――彫刻学科や造型学科ではなく、どうしてメイク学科に特殊造型専攻が開設されているのでしょうか。
東京ビジュアルアーツの前身は東京写真専門学校です。マスコミやメディア界に多くの卒業生を送り出してきた実績があります。その延長線上にあったエンターテインメント業界やクリエイティブ業界をも視野に入れた専門学校として、現校名に変更したのが1993年のこと。後にはメイク学科も加わりました。
特殊造型は、メイク学科の特殊メイク専攻の中で開設していたプログラムを独立させて誕生した専攻です。
大学の彫刻学科や造型学科とは生い立ちが異なる分、カリキュラムも異なります。ここでは、卒業後に進出する業界が求める技術を集めて、それに特化したカリキュラムを編成しています。
――卒業生の就職先はテレビや映画業界ということになるのでしょうか。
広い意味ではテレビや映画業界といえるかもしれませんが、就職先の多くは造型物の制作会社です。私たちがテレビや映画の中で見かけるモンスターや動物、あるいは人間のリアルな特殊造型作品は、テレビ局や映画会社のスタッフがつくっているわけではありません。その下請けである制作会社が手がけます。そしてこういった制作会社は、テレビや映画ばかりでなく、博物館やテーマパーク、イベントや店舗などで展示される作品もつくっています。
――授業は制作実習が中心ですか。
1年生の時間割を例にすると、実習系科目が11コマ、一般科目が4コマ。実習には造型作品の制作で用いる素材や、人間や動物の骨格を学んで実際につくる「創作造型実習」、主に粘土をつかって立体造型を再現する「彫塑実習」、型取りした造型物に特殊な加工を施す「特殊彫塑実習」、動物をリアルに再現する「特殊造型実習(アニマルモニュメント)」などのほか、特殊メイクも学びます。
一般科目としてはメイクアップや特殊加工に欠かせない「色彩学」などが中心です。
こういうと、いろんな作品を同時進行でつくっていくように聞こえるかもしれませんが、実際には、特定のテーマにそった制作物が完成するまで集中して取り組めるように、スパンの長い時間割を編成しています。
たとえばキズ痕を再現したパーツを制作する場合は、そのデッサンから彫塑、型取り、そして加工まで、完成するまで続けるわけです。こういった時間割編成ができるのは、専門学校ならではではないでしょうか。
曜日や時間によって制作物が異なるのは、学校側の都合にほかなりません。実際の制作現場ではそんなことはあり得ないし、集中して取り組んだときにはじめて生まれる工夫を表現することもできない。それになにより、つくる喜びがありません。
私は常々、教員のみなさんに「仕事に取り組む楽しさや、表現することの喜びを伝えてほしい」とお願いしています。働くことの苦労は、就職すればだれでもわかることです。いまは時間を忘れて取り組むことのできる自分を見いだしてほしいし、そうすることで完成度が高まる喜びを知ってもらいたい。それが働く意欲にもつながると考えています。
《つづく》