高等学校とキャリア教育

全国の高校で実施されているキャリア教育の取り組みを紹介

第22回

第22回
キャリア教育実践レポート
「千葉県のキャリア教育研究開発推進」Part.2
千葉県立浦安高等学校の実践レポート(2)

インタビュー
千葉県立浦安高等学校 教諭
名和田 聡先生
※組織名称、施策、役職名などは取材当時のものです
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千葉県立浦安高校は、県で最も都心寄りの浦安市にあり、急速に都市化する市民の要望に応えて、1973年(昭和43年)4月に開校し、35年の歴史を築いてきた。2005年度からは、「学ぶ意欲を喚起するための生徒支援システム」の開発をめざして、県の先進的な高等学校づくりである「パイロット・ハイスクール推進事業」に取り組んでいる。前回はその取り組みの一環としてSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)を中心に紹介したが、今回はそれ以外について、引き続きシステム開発を主導した名和田先生にお話を伺った。

キャリアサポートプログラムとして
「性に関する講演会」を実施 
他者との関係を考える

▲名和田 聡 教諭

本校では生徒一人ひとりの人間的成長をはかるとともに、円滑に授業を進めるため基本的な生活習慣の確立に全力で取り組んでいます。2004年度に千葉県が指定する「自己啓発指導重点校」となってからは、頭髪・服装指導や遅刻防止指導などを徹底。落ち着きのある学校生活が戻ってきました。次の段階におけるパイロット・ハイスクールとしての取り組みは、社会の一員として充実した人生を創造できるよう「社会性の育成」をめざそうということになりました。

前期では「キャリアサポートプログラム」として就職、進学に関した生徒指導や教育相談を実施。より高い価値観の陶冶(とうや)をめざしてワークシート形式の教材をパイロット・ハイスクール推進委員会で独自に開発し、展開しています。

2007年度には大学院生との連携によるSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)のほか、ゴールデンウィーク前や夏休み前など時期に応じて「性に関する講演会」を実施。外部の講師を招いて先進国のなかでは日本だけが増加傾向にあるAIDSの問題を指摘したり、自己中心的な考えで異性を傷つけてしまう例をプリントで取り上げて小論文を書いてもらったりしました。生徒指導部や養護教諭と連携し、適時性を検討しながら物事を考える力の涵養や他者の痛みの理解を促しています。

後期は「チャレンジレッスン」として
先生の得意分野で少人数教育を実践

そして後期は「チャレンジレッスン」と題して、資格取得から教養分野まで各学年8~10種類の講座を用意しました。各講座は生徒が自由に選択し、学ぶなかで基礎・発展的な学力を育てることに力を注いでいます。

これらの講座は先生の得意な分野で少人数制でもあるため、教員も授業に熱い思いがこもり、多くの生徒から良い反響が得られています。

3年前に比べると退学者が減少し、進学決定率が向上
社会性を培う試みは継続していきたい

こうしたパイロット・ハイスクールとしての取り組みと並行して、進路指導においてはインターンシップも導入して、これまで培ったコミュニケーション能力を発揮する生徒もいます。また保護者の方も校内や駅の美化運動、体育祭や文化祭など、いろんな形で学校行事に参加していただけるようになりました。これらの複合的な取り組みにより、生徒たちは着実に基本的生活習慣や、社会のマナー・ルールといった規範意識が向上してきたと感じますね。

たとえば教師と会話する際の言葉遣い、集会での態度などは飛躍的に向上しています。また3年前に比べると退学者が減少してピーク時の3分の1になっていますし、進路決定率が50%以下から、約80%まで向上。おそらく今年度は100%に近いところまでいくと確信しています。

パイロット・ハイスクールとしての取り組みは今年度までとなりますが、今後も同じような活動を継続的に続けていく考えです。全教員が共通の意識に立つとともに地域、大学などと連携しながら社会性を校内に持ち込んで、自律的な生徒に育てる試みを続けていきたい。社会性や自律心が育てば、おのずと学ぶ意欲の向上につながっていくと思います。

浦安高等学校「学習意欲を喚起する生徒支援システムの
シークエンスと連携のチャート」

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