EYE's Journal

いま知りたい教育関連のテーマについて、ドリコムアイ編集部が取材・調査

49-5

シリーズ49 学校の防災
Part.5
~首都圏の高等学校に災害への備えを聞く~
『学校における防災対策についての
アンケート調査』報告(3)
【Q10~Q15】

編集部
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
公開:

日本ドリコムでは2019年12月に、首都圏(茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川の1都6県)の高等学校に対して『学校における防災対策についてのアンケート調査』を実施した。本アンケート報告が各校の防災対策に資するところとなれば幸甚である。先生方には年末のご多忙の中、多数の質問事項にも関わらず、丁寧かつ的確にご回答いただき、非常に有意義なアンケートとなった。厚く御礼申し上げる。集計結果を3回に渡って公開する。(その3/全3回)

「アンケート調査報告(1)【Q1~Q5】」はこちら

「アンケート調査報告(2)【Q6~Q9】」はこちら

Q10 備蓄倉庫等特別の設備・機能を備えていますか?
a.備えている/b.備えていない

【Q10】備蓄倉庫等の設備・機能を備えていますか?

a.「備蓄倉庫等の設備・機能を備えている」学校は135校(76.3%)。b.「備えていない」学校は41校(23.2%)、不明が1校(0.6%)だった。

ただし後述の問11への回答でも分かる通り、特別な備蓄設備等がなくても備蓄物資等を校内の特定場所で常備・管理している学校は多い。

Q11 備蓄物資は保管してありますか?
a.水/b.食糧/c.毛布等宿泊装備/d.医薬品/e.その他/f.上記に関して(_人_日分保管してある)

【Q11】備蓄物資は保管してありますか?
横スクロールしてご覧ください

まずa.「水」は157校(88.7%)、b.「食料」は155校(87.6%)、c.「毛布等宿泊装備」も127校(71.8%)が常備している。一方、d.「医薬品」に関しては68校(38.4%)とやや少ない。

その他の保管品目に関しては、ランタン・懐中電灯など照明器具(7校)、ヘルメット(3校)、ラジオ(3校)、防災シート、アルミシート(3校)、汗拭きシート、仕切り、肌着、マスク、生理用品(3校)、救護器具、ガスコンロ(2校)、調理器具、ストーブ、携行缶、工具、バッテリー、浄水器、発電機(14校)、簡易トイレ(23校)、防災セット(2校)など。

変わったところではハラール対応(イスラム対応)食料もあり、備蓄物資から学校の国際化も垣間見える。

食料の備蓄量としては、学校の生徒・職員分だけでなく避難所としての機能が想定される場合もあるので、各校で大きな違いがある。具体的な人数の回答があった中で最小は70人(×3日分)、最大のケースは2690人(×3日分)だった。

保管する保存食の量は、1日分が25校(14.1%)、2日分が7校(4.0%)、3日が76校(42.9%)と最も多かった。このほか1食分、4日分、5日分、6日分、15日分が各1校(0.6%)、1.5日分と7日分が各2校(1.1%)となっている。

Q12 校内の耐震化は済んでいますか?
a.全ての建物で実施済み/b.一部耐震化されていない建物がある/c.全く耐震化されていない

【Q12】校内の耐震化は?

ここでは学校施設の地震対策について聞いている。a.「全ての建物で耐震化対策済み」は141校(79.7%)で、b.「一部耐震化」が34校(19.2%)、c.「全く耐震化されていない」はわずか2校(1.1%)に過ぎなかった。

施設に関する予算の執行は金額も大きく、現場の意向だけでは如何ともし難い部分があると思われるが、完全耐震化でも8割、一部耐震化を含め99%近くの学校で何らかの対策が取られていると考えれば、地震対策に関しては大きく進展していると考えられる。

Q14 防災に関して自治体や警察・消防など公的機関に求めるものは何かありますか?
(自由回答)

ここでは災害時に協力が不可欠となる自治体、警察・消防との関係について尋ねている。目についた回答を列挙していく。表現は異なっているが、情報提供に期待する声が多いのは共通した意見で、災害時だけでなく日常の情報交換、防災訓練等の指導、防災対策への助言などを活発に行い、連携を強化していきたいという声も多かった。

《回答例》

「防災訓練、研修等で指導をお願いしているが、引き続き協力を」
「食料備蓄が十分でないので補助を」
「正確で迅速な防災情報の提供と共有、伝達方法の確保。交通機関や周辺の災害情報、危険箇所情報を」
「私立だが公的機関同様、物資の確認配布を希望」
「住宅密集地での効果的な避難情報の提供」「判断に困らない適切な情報提供」
「被災地域・避難所での治安確保。避難が長期化したときの対策」
「定期的な情報交換による連携強化を」
「フェイクニュースへの対応」
「災害を考慮した交通網・交通機関の整備を」
「通信手段が途絶したときの連携について」
「防災用品購入時や防災設備設置時の補助を」
「防災訓練時に精密な周辺ハザードマップがほしい」
「インフラ、特に電力の早期復旧を」
「一般避難者に対する非常食等の費用負担を」
「情報だけでなく物資も迅速な提供を」
「そなエリアのような疑似体験学習エリアを整備」
「行政、警察、消防の各機関で連携(統一)した情報伝達を」
「校外の災害状況を迅速に把握できる情報伝達組織がほしい」

Q15 その他、学校における防災に関して意見があればお書きください。
(自由回答)

この最終項目では多くの建設的な意見を頂戴した。短いコメントの中からも、多くの学校で真摯に防災に取り組んでいることがわかり、本アンケート調査の意義を実感している。掲載例以外では備蓄に関する不安や対策の意見が複数あった。今後、防災で検討すべき方向性を示唆するものもあると思われるので、ぜひご一読いただきたい。

《回答例》

「地域防災に学校がどの程度関与するのか、他校との連携をどうすべきか」
「発災後3日以上帰宅できなくなった際、いかにすべきか」
「災害避難、帰宅困難の方への対応方法などが十分でない」
「一般的な避難訓練(一斉一箇所への避難)は本当に正しい避難方法か?」
「避難時にけが人が出た場合の対処方法」
「市・県・周辺住民とのつながりが必要と考える」
「下校後に公共交通機関が不通になった際の、生徒把握や安全確保法の研究が必要」
「備蓄物資の保管場所の確保に苦慮している」
「学校はまず生徒の安全を考えるべき。危険をともなう作業には反対せざるを得ない」
「地域といかに連携していくかが問われる。日頃の近隣との付き合いが、いざというときに物を言うが、苦情の受け口となっている感もあり、難しい」
「実際に起こった場合を想定した訓練をもっと行うべき」
「職員は自宅と勤務地が離れている場合が多く、震災等の際に対応が難しい」
「生徒がいるときなど地域の方が避難された場合、受け入れスペースがない」
「他の学校がどんな体制で備えているのか聞きたい」
「専門家の適切な情報を共有し、常に危機意識を持って対応できるよう準備したい」
「全体として学校における防災意識が低い。高めるためにも、正しい情報提供を」
「避難所となった場合、生徒の安全が第一だが、教員の人数から対応に限界がある。スタッフの構成など自治体等と十分な事前協議の必要性を感じる」

お忙しい中、アンケート調査にご協力いただいた方に厚くお礼申し上げます。ありがとうございました。

「アンケート調査報告(1)【Q1~Q5】」はこちら

「アンケート調査報告(2)【Q6~Q9】」はこちら

※記載されている各会社名、各製品名およびサービス名などは各社の商標または登録商標です。

新着記事 New Articles