いま知りたい教育関連のテーマについて、ドリコムアイ編集部が取材・調査
52-2シリーズ52 新型コロナウイルス感染症拡大に伴う教育の動き
Part.2
高校に「9月入学」をヒアリング
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2020年5月19日、萩生田光一文部科学大臣は、9月入学・新学期制について現段階の検討状況と見解を示した〈萩生田光一文部科学大臣記者会見録(令和2年5月19日)〉。教育業界だけでなく社会全体に影響する「9月入学・新学期制」を現場の高校教員はどう捉えているのだろうか。日本ドリコム高校担当者を通じ全国の高等学校進路担当教諭に「9月入学について」ヒアリングを行った。(調査期間5/8〜5/25:15都道府県106校)
「どちらともいえない」が40%
賛成派も早急な変更には慎重な意見多数
5月上旬からスタートした「9月入学」に関するヒアリングについて、現時点の集計から、現場教員の声をピックアップした。
回答からは、現場の教員の戸惑いが強く感じられる。
「目の前の3年生の進路指導をどうするかで、いっぱいいっぱいなので考えられない」(千葉県立高校)
「来週から分散登校が始まるので、現実的には無理。考えたくない」(広島県立高校)
今に対応するだけで精一杯との声が多い。
「実行するなら長い時間が必要。それよりもタブレット配布など、『今』円滑にオンラインが進むような施策を行ってほしい」(静岡県立高校)
先のことよりも生徒に「今」必要な施策の拡充を求める声もある。
以前からも海外とのギャップ解消のため春入学・秋入学の議論はあった。東京大学が国際的な標準に合わせて、海外留学を促進するグローバル化への対応策を検討した経緯もある。
高校教員からは「留学から帰ってきた生徒がひとりぼっちの卒業式などもしたことがあり、国際的な観点からみて、他国に合わせ9月入学にすることは賛成」(宮城県立高校)などの意見もあった。
教育業界だけではなく、社会全体システムに影響が大きい。「就職する生徒が多いので、就職の事も考えたうえで行うのであればいいと思うが、基本的には難しい」(愛知県立高校)など高校卒業後の就職スケジュールを懸念する声もあった。
「反対。社会システム全体が変わる必要があると思うため」(千葉県立高校)
社会システムの調整を危ぶむ声は多い。賛成派のなかにも早急な移行には慎重な意見が多かった。
回 答 | 校数 | 割合 |
9月入学に「賛成」 | 20校 | 18.9% |
9月入学に「反対」 | 27校 | 25.5% |
「どちらともいえない」 | 43校 | 40.6% |
わからない、無回答 | 16校 | 15.1% |
計 | 106校 | 100% |
※ヒアリング内容から、編集部で態度を判断しています。
■調査期間5/8〜5/25
15都道府県106校(北海道2、宮城4、埼玉2、千葉13、東京11、神奈川2、静岡5、愛知4、岐阜16、三重7、大阪1、兵庫4、広島32、福岡2、長崎1)
学びを止めてはならない
議論もやめてはいけない
今回の段階でのヒアリング結果では、現場の教員の混乱と戸惑い、諦め、希望など、様々な意見があった。教員からのメッセージは、今の切実な状況を語っている。どの意見にも生徒の学びに対する教員の想いが強く感じられた。
文部科学省は、登校できない児童生徒に対して、児童生徒や家庭の事情を踏まえつつ、紙の教材、テレビ放送、オンライン教材などを活用し、学校が指導計画等を踏まえた適切な家庭学習を課すとともに、電話や電子メール等の様々な手段を通じて教師が学習状況を把握し、きめ細かく学習支援を行うこと。感染症対策を徹底した上で分散登校を実施し、段階的に教育活動を再開することや、学校再開後には時間割り編成の工夫や長期休業期間の短縮、土曜日の活用等により学校における教育活動を充実すること、学習の定着が不十分な児童生徒に対しては補習を行うことなどを通達している。
今後編集部では、オンライン学習やICTなど学び環境について現状を取材していく。
原稿を書いている5月21日現在、近畿3府県の緊急事態が解除されることが決まった。首都圏・北海道は25日に改めて解除の判断がされる。地域・家庭により教育の格差は今も広がり続けている。この格差を埋める努力は、教員だけでなく社会全体で考える必要があると「9月入学」で私は気づかされた。教育がつくる未来の日本のために、私達は議論を尽くし、声をあげなければならない。
次回 Part.3では集計結果を更新し、寄せられた意見を掲載します。