EYE's Journal
いま知りたい教育関連のテーマについて、ドリコムアイ編集部が取材・調査
52-3シリーズ52 新型コロナウイルス感染症拡大に伴う教育の動き
Part.3
高校に「9月入学」をヒアリング《調査結果》
編集部
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
公開:
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2020年6月2日、首相は「9月入学」の今年度・来年度からの導入について、事実上見送る意向を示した(2020年6月2日NHKニュース)。政府は新型コロナの感染が再拡大し、大規模な休校要請を改めて行わざるを得なくなる懸念を鑑み、選択肢の一つとしては9月入学を排除せず、万が一の展開に備え導入時の問題点に関する事務レベルの精査は続ける方針(2020年6月1日時事トッドコムニュース)。9月入学は事実上見送りとなったが、政府には引き続き検討・議論は続けてほしい。日本ドリコムが全国の高等学校進路担当教諭へ実施した「9月入学について」のヒアリング結果を掲載する。(調査期間5/8〜5/25:15都道府県106校)
全国高等学校への電話による聞き取り調査
回 答 | 校数 | 割合 |
9月入学に「賛成」 | 20校 | 18.9% |
9月入学に「反対」 | 27校 | 25.5% |
「どちらともいえない」 | 43校 | 40.6% |
わからない、無回答 | 16校 | 15.1% |
計 | 106校 | 100% |
※ヒアリング内容から、編集部で態度を判断しています。
■調査期間5/8〜5/25
15都道府県106校(北海道2、宮城4、埼玉2、千葉13、東京11、神奈川2、静岡5、愛知4、岐阜16、三重7、大阪1、兵庫4、広島32、福岡2、長崎1)
9月入学について「賛成」意見
20校(18.9%)
- 個人的にはいいと思う。前任校では留学から帰ってきた生徒の1人ぼっちの卒業式などもしたことがあり、国際的な観点からみて、他国に合わせ9月入学にすることは賛成〔宮城〕
- いますぐやってもよい。今の3年生の卒業時期を延ばしてちゃんと高校生活を送らせてあげたい。授業時間を確保する調整はしているが、3か月の空白は埋められない〔埼玉〕
- 基本的には賛成。しかし影響範囲が大きいので難しそう〔千葉〕
- 賛成。コロナの影響だけで変えるのは反対〔千葉〕
- メリットはあると思うが、今年度やるのであれば授業料等のこともあるので、賛成だが慎重派〔千葉〕
- 大賛成。来年と言わず今年から9月スタートにしてほしいくらい〔千葉〕
- (個人的な意見として)留学については、妥当性はある。会計年度とのズレ、定年をむかえる教員の対応など、考えなければいけないことがあるので、制度改革をきちんと行って将来的に9月入学、となるのであれば〇〔東京〕
- 賛成。でも今年度からは難しい気がする〔東京〕
- 教員室でも話題にはなっているが、意見はバラバラ。賛成反対それぞれの代表的な意見としては、留学を見据えれば〇、経済的、社会的影響の大きさから言えば×、といったところ。9月入学の議論自体はもともとあり、留学のしやすさ、受け入れやすさから端を発した議論だったと認識している。そう考えると個人的な意見ではあるが、今後国際化は避けられない中で9月入学に切り替える必要性は大きく、それには平常時はむしろむずかしいと考えている。やるなら今のような状況下だろうと考えているので、賛成〔東京〕
- 実行するなら長い時間が必要。それよりもタブレット配布など、「今」円滑にオンラインが進むような施策を行ってほしい〔静岡〕
- 将来的に段階的移行し賛成〔岐阜〕
- 個人的には反対ではなくこの機会に実現してもよいが、簡単にはできないかも〔岐阜〕
- 今年度導入であれば、生徒にゆとりができるので賛成。ただスケジュール的に厳しいだろう。体制や教員の雇用にもかかわるので、移行の仕方が重要。9月入学自体については、留学の観点からももともと賛成〔大阪〕
- 生徒のことを考えると、スケジュールに余裕が持てる9月入学は賛成。ネックは大人の事情。9月入学についてももともと賛成〔兵庫〕
- 今年はむつかしいと思いますが、移行するまでの段取りをきちんとするのであれば有だと思う〔広島〕
- 学習期間の調整ができれば私は賛成です〔広島〕
- 9月入学は良いと思うが、今ではない〔広島〕
- 留学等を考えてもいいと思う。就職になると体制が整わないと影響が大きい。進路としては余裕ができるのはありがたい〔広島〕
- 個人的には賛成です。しかし今年は物理的に無理だろう〔広島〕
- まあ難しい、個人的にはいいと思う〔広島〕
9月入学について「反対」意見
27校(25.5%)
- 反対。宮城県に関して6月から平常に戻るのに、9月入学になられては色々と動きが変わってしまう〔宮城〕
- 将来的にはわからないが、このタイミングではないと思う。社会の仕組みや学費のこともあるので慎重に考えるべきだと思う〔千葉〕
- 反対。情緒を大事にしたい〔千葉〕
- 反対。社会システム全体が変わる必要があると思うため。周りの先生方もほとんど反対という意見〔千葉〕
- 反対。やるとしても準備に2〜3年かける必要があると思う〔千葉〕
- 従来通りでよいと考えている〔東京〕
- 今年度でも来年度でも反対。裕福な家庭はいいかもしれないが、そうではない家庭の場合、こどもの自立が遅くなることにつながることもあるため反対〔東京〕
- どちらかといえば反対。やるのであれば長い目で見て〔静岡〕
- 無理であろう〔静岡〕
- 個人的には反対。課題が多く急に変えることは難しい〔岐阜〕
- 個人的には体制が整っていないため無理があり反対〔岐阜〕
- 現状対応が厳しいため個人的には反対〔岐阜〕
- もともとはグローバルスタンダードの視点から、9月入学は賛成派だった。ただ、実際導入となると、現場で発生する混乱を考えると現実的ではない。別に9月入学だからグローバルスタンダード、というわけでもない。グローバルスタンダードに取り組むのであれば、他のことも含めて考えるべき。
補足として、9月入学導入が提言された前提として、休校により授業時間が確保できていないことに対して「勉強時間が不足していると言われているが、実際生徒は時間を確保することができ、勉強できている生徒は勉強できている」。もちろん環境の違いに依存〔兵庫〕 - 反対です。来週から分散登校も始まるのでそんなことは考えたくない〔広島〕
- 反対です。都会とは違う〔広島〕
- 今年は無理だろう。課題が多く、来年も厳しいと思う〔広島〕
- 今は4月入学のままで良いのではないか。教育だけではなく、経済も関わるので〔広島〕
- とんでもないことだし、今から準備していくのはとてもじゃないが無理だと思う〔広島〕
- 9月は難しいでしょう〔広島〕
- チャンスだが時期尚早かも…〔広島〕
- 9月入学は不可能。日本の文化・流れ・雇用・生活様式全部が変わらないと〔広島〕
- 9月は無理。納得がいく全体へのコンセンサスが取れないと難しいのでは〔広島〕
- 就職が多いので、今年の9月はあり得ない。就職の時期を変えることができたら賛成〔広島〕
- 来週から分散登校が始まるので、現実的には無理。考えたくない〔広島〕
- 難しい、社会人になった際に体制が整ってないと困るのでは〔広島〕
- 対応が間に合わないから無理〔広島〕
- 9月は無理、体制が整ってない〔広島〕
9月入学について「どちらともいえない」意見
43校(40.6%)
- 国際化ならわからなくもないが、少なくても今のタイミングではないと思う〔宮城〕
- どちらでも可、9月入学が決まればそれに従うのみ〔宮城〕
- 年度サイクルはシステムなので、決まればそれに従うだけになる。切り替えるときはかなりの労力が必要になるので、慎重に行うことが必要〔埼玉〕
- どちらが良いかとの結論は持たない。高校生の受験時期が冬でインフルエンザなどの流行の心配がない9月入学が…、との論調もあるが9月入学なら2学期の中間・期末試験、AO入試や推薦入試のタイミングが比較的寒い時期にあたることになる。使用する入試区分のウエイトにもよるので高校のレベルなどで感想は変わるかも知れない〔千葉〕
- 今年度は無理。この先数年かけてシフトチェンジするのはアリだと思う〔千葉〕
- メリットデメリットがあると思うが、早急に変わるのはどうかと思う〔千葉〕
- 留学の関係を考えるといいと思うが、入学、就職も関係してくるので難しいと思う〔千葉〕
- 附属元の大学に進学する生徒が多いので、大学の意向に影響を受ける〔東京〕
- 色々な立場のことを考えると微妙だと思う〔東京〕
- 交代勤務なので他の教員の意見はわからないが、個人的には教育現場だけの問題ではなく、社会的な影響も大きい問題なのでむずかしいと考えている〔東京〕
- まったく考えておらず、どちらともいえない〔東京〕
- 個人的にはどちらともいえない。ただ早く決めてって感じ。結局現場に降りかかってくる問題。自分は高3の科目担当なので、仮に今年度が9月スタートになった場合、勉強する時間が増えたんだからいいんじゃないかと捉えることもできる。もちろん、生徒は公平な受験制度・条件を求めるわけで、準備期間が足りなければ文句も出る。留学や海外の制度との足並みにしても、揃えたところで殆どの生徒が留学に行かないのでメリットは感じない〔神奈川〕
- 自分だけの話をするのであれば、今年の9月入学は、特に問題ない。高校単体であれば、9月から決められた授業をして行事をするだけなので問題ない。学年を上げるボーダーをどう決めるかで決まってくる。教員の個人レベルの話ではそんなに負担感は感じないと思う〔神奈川〕
- 個人的にはOK。が、全体としては難しいだろう〔静岡〕
- 学校だけが変わっても、社会がかわらないと現実的ではない〔静岡〕
- 進路就職担当としては、企業側の収支決算上、9月入社対応が気になる。個人的にはどちらともいえない〔岐阜〕
- 色々と課題が多い。特に情報が少ない企業側の通年採用となれば新卒採用が心配である〔岐阜〕
- どちらでもよい。県からの指示に従うのみ〔岐阜〕
- 将来的にはありだが、現状では実現は難しい〔岐阜〕
- 個人的にはどちらでもよい〔岐阜〕
- 日本の社会体制を改革しないと無理。企業側の受入体制も必要。今年度は無理かも〔岐阜〕
- どちらともいえない〔岐阜〕
- 個人的にはどちらでもよい。海外の発想がないため現状のままでよいかも〔岐阜〕
- メリット・デメリットがあるため賛成・反対は何とも言えない〔岐阜〕
- どちらでもいいが、普通の高校生にとってそもそも外国に合わせる必要性があるのか疑問〔愛知〕
- 就職が多い学校もあるので、就職の事も考えたうえで行うのであればいいと思うが、基本的には難しい〔愛知〕
- 大学や企業にはいいかもしれないが、高校はどうかわからない。外国の大学を受験対象にする生徒が増えるかもしれないが、地元志向が強い現状では無理では〔愛知〕
- 段取りをしっかりしてからなら有りだと思うが現実的ではない〔三重〕
- 対応が間に合わないし、すぐに変えられるものでもない〔三重〕
- 現実的に考えた事はないが、自校の留学システムが変更することによって支障がでてこないかどうか。学力を考えると三重県内の高校には利はない〔三重〕
- メリット・デメリットあるが、環境を整えてからなら有りだと思うが難しいと思う〔三重〕
- 今年度実施に関して言えば、生徒のスケジュールに余裕ができるので賛成。9月入学自体をどう思うかとなると、否定でも肯定でもない〔兵庫〕
- 現3年生に対してなら賛成。ただ、立ち位置によって考え方、見え方が違うので来年以降であれば、どちらでもよい。9月入学になると入試の時期に起こるインフルエンザや天候の影響を受けないと言われているが、7月に入試が行われることでの熱中症の影響などが出るのではないかと思う〔兵庫〕
- ガラッと変えるなら今のタイミングだろうが、課題がたくさんあり(台風が発生する時期と卒業の時期がかぶる等)難しいだろう〔広島〕
- 不可能ではないと思うが、調整が難しいのでは。いろいろ整えばありだと思う〔広島〕
- すぐに9月入学の体制を取れるならいい(仕方ない)と思いますとのこと〔広島〕
- やるなら今年かなと思うが、社会が変わらないとむつかしいだろう〔広島〕
- 9月入学はまだ情報が出そろってないので、判断しかねる〔広島〕
- タイミングとしては今だと思うが現実的には難しいかも〔広島〕
- 体制などを考えて難しいと思う〔広島〕
- いい・悪いの判断はしかねる。コロナに便乗して9月になってもいいのか?とは思う。試験や学費も関係してくるので〔広島〕
- それぞれの立場で考え方は違うが、準備など考えると非常に厳しい〔福岡〕
- 授業時間数が問題。あとは入試までのスケジュールや就職活動、学校行事では体育祭・文化祭や部活動の大会などのスケジュールが大変になりそう。一回でずらす(当該年度4月から翌年度8月までの生徒を入学)のと5年掛ける(毎年13カ月分の生徒が入学)の2つのプランがあるが、前者は大学入試と就活で大変なことが起こる。求人がいきなり増えるわけでなし…〔長崎〕
9月入学について「わからない・無回答」意見
16校(15.1%)
- 企業や大学など、出口側の受入れ体制が整わないと、安易に賛成とは言えない。また一般教員として、こういう類の回答は差し控えたい〔北海道〕
- 公立高校教員の立場では回答できない。上からも何もないし、教員間でも話題に上っていない。ニュースで聞く以上の情報はない〔北海道〕
- 目の前の3年生の進路指導をどうするかでいっぱいいっぱいなので、考えられない〔千葉〕
- 学内ではそういった話し合いは持たれていないので、コメントは控えたい。個人的には、今の3年生の進路をどうしていくのか?がいちばん大事だと思っている。就職の生徒には9月入学は不利に働くだろうと思っている〔東京〕
- 今は正直そこまで考えが及ばない。ほかの高校の先生方はどうなんでしょう?〔東京〕
- 何とも言えなくノーコメント〔岐阜〕
- 個人的意見であっても軽率に電話ではお答えできない〔岐阜〕
- 現状考える余裕がないが、高校のメリットが具体的に感じられない〔愛知〕
- 企業側の求人スケジュールがはっきりしないといい・悪いは言えない。今はそれどころではない〔三重〕
- そんな簡単に出来るものではないと思う〔三重〕
- 体制が整ってないから不可能〔三重〕
- 不確定要素が多く、話せることはない〔広島〕
- お答えできません〔広島〕
- 近々に変えるのは難しいだろうが、システムが変わる方向性になるなら、教員としては「生徒が不利益にならないように現場として動いていきたい」と思っている〔広島〕
- 入学時期をずらすことで生まれるひずみが、解消できるかどうかだと思います〔広島〕
- 国・県の指示に従うのみ。こちらがどうこう言ってもどうもならない〔福岡〕
お忙しい中、ヒアリング調査にご協力いただいた方へ厚くお礼申し上げます。ありがとうございました。