いま知りたい教育関連のテーマについて、ドリコムアイ編集部が取材・調査
43-1シリーズ43 高等学校アンケート調査
Part.1
学校における先生のアプリ活用について
2017年度『学校における教育の情報化の調査』から
最新の高等学校のICT環境を概観する
公開:
ドリコムアイ.netでは、2018年11月から12月にかけ、スマートフォンやタブレットでのアプリの利用について、高等学校の進路指導担当の先生方にうかがうアンケート調査を行った。このアンケート調査の詳細については後述するが、その前に高等学校と情報化をめぐる状況について、文部科学省が昨年度末(2018年3月)に実施した『学校における教育の情報化の調査結果』について概観しておこう。(Part.1/全3回)
Part.2「スマートフォン・タブレットなどの学校での使用環境や問題点」はこちら
現在、文部科学省・総務省により教育情報化が推進され、初等・中等教育における各学校で教育の情報化が推進されている。これに伴い、各高等学校では、校内の教育の情報化、インターネットや校内LANの整備が進められている。
この文部科学省の調査は、初等・中等教育での教育の情報化の実態などを把握するため、各学校に対して毎年度末にアンケート調査を行い、学校教育でのICT機器やインターネット接続環境、教員のICT活用指導力の状況などをまとめている。
そこで2018年10月に公表された2017年度の集計確定値から、高等学校(回答3,570校)でのICT環境の普及の状況などを見ていこう。毎年、回答学校数が変化するため、前年と比較する場合は、なるべく割合(%など)で表記している。
高校における
コンピュータの設置状況
この調査による高等学校における教育用コンピュータは、49万1,182台だった。「教育用コンピュータ」とは、校務などではなく、主として教育用に利用されているコンピュータを指す。1校平均でコンピュータ1台あたりの生徒数は4.6人(前年4.8人)、1校あたりの台数は137.6台(同134.1台)となっている【図1】。
【図1】教育用コンピュータ1台あたりの生徒数推移(高等学校)
このうちクラス用コンピュータ(普通教室・特別教室等で1人または数人で1台使用するコンピュータ)は13万1,962台で1校あたり37.0台、さらにキーボード付きのものは10万680台である。
この調査では特にタブレット型コンピュータの数を明記していないが、キーボード付きでないコンピュータをタブレット型とすると3万1,282台で、1校あたりの台数は8.8台となる(クラス用コンピュータとしての台数)。
コンピュータの
OSプラットフォーム
【図2】高等学校における教育用コンピュータのOS環境
教育用コンピュータで用いられるオペレーティングシステム(OS)環境はWindowsが最も多く、中でもWindows 7以降が86.5%を占める。他はiOSが3.4%、Mac OSとAndroidがともに0.9%などである。
Windows系では、すでにサポートが終了しているWindows Vista以前のWindows OSを搭載するコンピュータもまだ7.8%使用されている【図2】。
すでにサポートが終了しているOS搭載のPCは、セキュリティ上に致命的な脆弱性を抱えている場合もあるので、機能的には利用可能でも、インターネット接続用には適さない。
LAN/インターネットへの
接続環境
【図3】高等学校におけるインターネット接続状況
インターネットへの接続では、30Mbps以上の接続環境にある学校が95.7%、100Mbps以上は75.8%となっている【図3】。光ファイバなどで高速な接続環境が用意されている学校が多数を占め、クラス全員での使用でも、大きな通信遅延のない環境で利用可能であると思われる。
普通教室における校内LAN整備率は94.7%(同94.7%)と高いが、無線LAN接続率は22.5%(同19.5%)となっている。無線LAN環境の数値は前年より向上しているが、教室内でのWi-Fi接続は、まだ容易でない。これは同時にタブレット型等の導入が難しいことも意味している。
セキュリティ対策として、有害サイトなどのフィルタリングは99.8%、ウイルス対策は100%と、ほぼ全校で実施している。また教育情報のセキュリティポリシー(2017年の「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」に準拠)を策定している学校は91.0%と、こちらも大多数の学校が何らかの基準を持っていると答えている。
先生が使える
校務コンピュータの環境
学校に設置され教員が使用する校務用コンピュータは23万765台で、教員あたりの整備率は133.7%(同129.2%)、校内LANに接続されている割合は93.4%(同92.4%)となっている。
個人所有のコンピュータを学校で使用している先生は教員全体の3.9%。一方で個人のコンピュータ持ち込みを禁止している学校も42.2%にのぼる。
これは情報流出の危険性を事前に排除する理由もあり、やむを得ない部分もある。ただし利用規定がない学校も7%あった。
学校CIOの設置と
ICT活用指導能力
学校CIO(学校のICT化について総括的な責任を持ち、ビジョンを構築し実行するため学校におかれる責任者)を設置している学校は、43.4%だった。ネットワークが運用されている以上、最高情報責任者の設置は不可欠といえるが、詳しいからという理由でこの業務が特定の先生に集中しないよう、配慮が必要だろう。
このほか、文部科学省の「教員のICT活用指導力の基準の具体化・明確化に関する検討会」が2006年にまとめた5大項目からなるチェックリストに基づき、教員の自己評価による調査も行っている。
これは教員のICT活用指導力の状況に関し、「わりにできる」「ややできる」人の割合はA「教材研究・指導の準備・評価などにICTを活用する能力」が86.0%(同86.9%)、B「授業中にICTを活用して指導する能力」が76.2%(同77.5%)、C「生徒のICT活用を指導する能力」は71.3%(同73.7%)、D「情報モラルなどを指導する能力」が81.6%(同82.5%)、E「校務にICTを活用する能力」が84.1%(同85.0%)であった。先生方の自己評価ではあるが、前年より若干下がっているのは、ICT環境の高度化・複雑化による影響もあるだろう。
ICT関連研修の受講状況では、2017年度中に「ICT活用指導力の状況の各項目に関する研修を受講した教員」は、授業を担当している全教員の33.2%に当たる。これは小学校53.4%、中学校41.4%に比べると、かなり低い割合となっている【図4】。
【図4】年度中に「ICT活用指導力に関する各項目」の研修に参加した
授業担当教員の割合