EYE's Journal

いま知りたい教育関連のテーマについて、ドリコムアイ編集部が取材・調査

49-1

シリーズ49 学校の防災
Part.1
学校の防災についてのアンケート調査
震災の経験を経て、学校の防災は何が変わったのか

編集部
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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日本では、阪神淡路大震災、東日本大震災、近年では熊本大地震など、大型地震が頻発しており、常に意識すべき災害の筆頭といえるだろう。東日本大震災では津波、火災、原子力など、地震に起因する災害も同時に発生し、未曾有の被害と混乱をもたらした。今後は首都圏での直下型地震や南海トラフを震源とする巨大地震の発生も懸念されるところだ。
東日本大震災では、様々な想定外の問題が発生した。直接被害に遭われた学校だけでなく、報道された数々のケースは、多くの学校関係者にとって、改めて災害への準備や対応を考える契機になった。学校の防災機能や行動指針について、さまざまな課題が顕在化し、まさにハード・ソフトの両面から大幅な見直しが急務となったのである。また現実の災害は、地震やそれに付随して発生するものだけではない。大雨、台風、火山、竜巻、大雪、土砂災害なども起こりうる災害として考慮しなければならない。
東日本大震災後、災害対策基本法等の災害対策法制も整備され、行政機関や研究機関においては地震や津波による被害や避難所の実態に関する様々な調査や研究成果も公表されている。文部科学省もこうした経験をふまえ、新たな学校の防災対策を推進しているところだ。
本特集では、学校の防災で実際にどのような進捗がみられ、どのような課題が残されているのかについてアンケート調査を行い、さまざまな方向から考察・検証する。

「アンケート調査報告(1)【Q1~Q5】」はこちら

「アンケート調査報告(2)【Q6~Q9】」はこちら

「アンケート調査報告(3)【Q10~Q15】」はこちら

防災に向けた
施設・環境の整備が進行中

文部科学省では、学校の防災機能強化の観点から、対策に向けたさまざまなサポートを行ってきたが、東日本大震災で顕在化した様々な課題により、大きな見直しが行われている。文科省では、これらの課題のテーマを明確化し、さらに全国に発信し、周知させるため、「学校施設の防災力強化プロジェクト」として取り組みモデルの概要を公表している。

主要なテーマは5つあり、列挙すると以下の通りとなっている。

①津波対策
津波被害が想定される地域における学校施設の立地・安全対策の基礎的検討

②避難所としての防災機能強化
学校規模や地域特性等を踏まえた防災機能強化策の検討

③非構造部材の耐震点検
域内の学校施設の状況等を勘案した、非構造部材の耐震点検手法等の検討

④竜巻等突風対策
ガラスの飛散防止対策など竜巻等突風への対策の検討

⑤ソフト・ハード一体となった学校防災
地震・津波災害・竜巻災害等に対応したソフト・ハード一体となった学校の防災対策の検討

生徒、教職員、更に地域住民を災害から守る大前提として、学校の校舎等の施設が震災・火災に強い構造物であることが求められることは言うまでもない。これは予算執行の問題等もあるが、多くの学校で耐震・防火工事などが優先して進められている。学校関連の耐震工事では、校舎・体育館等の施設の耐震工事、天井などの落下防止措置、外塀の倒壊防止などが挙げられる。

このほか災害からの避難行動、生徒等の保護者等への引き渡しや学校での待機、学校施設が避難所になる際の協力体制の確立などが重要かつ早急に解決すべき課題となっている。

防災教育推進のために
何が必要か

こうした観点から、各学校でも、児童等の安全確保等のための教職員の行動指針作りが進められている。学校防災本部の役割についての検討を行い、教職員の各班への割り振りや、担うべき業務等について周知しておかなければならない。

また災害の起こった時間帯などによって全教職員が参集できないこともあるので、現場で対応できる教職員の数、被害の状況などに応じて柔軟に対応することが可能な緊急の応急的指揮システムの整備を図らなければならない。

災害発生時に生徒が在校している場合でも、教室での授業中、屋外での授業中、休憩時間中、登下校時間など、状況によって異なるだろう。また社会見学や遠足など校外での活動中である場合には、学校における場合とは異なった危険に遭遇することが考えられ、このような可能性も考え、個々の教職員の判断による行動が求められる。

しかし、生徒の登下校時や在宅時に災害が発生した場合は、生徒自身の適切な判断に基づく行動が必要となる。個々の生徒自身が災害時における危険を認識し、日常的な備えを行うとともに、状況に応じ、的確な判断のもとで、自らの安全を確保するための行動ができるようにする。災害時の非常事態の中で生き抜くための知恵などを身に付けておくことも望まれる。これが防災教育の大前提といえるだろう。自然災害の発生メカニズム、地域の自然環境、災害や防災についての基礎的・基本的知識を得て理解できる必要がある。

さらに災害発生やその後に、進んで他の人々や集団、地域の安全に役立つことができるようにすることも重要だ。災害時には、ボランティアの活動が社会機能の回復に重要な役割を果たし得るもので、ボランティア教育の取り組むことが防災教育の柱として必要なものとなる。

防災教育を効果的に推進するためには、各地域に共通する内容と、地域の特性や実態に応じて指導する内容に分けて内容を検討する必要がある。また各学校では、生徒の理解に応じた指導を行い、個々の生徒が適切に災害に対応する能力が確実に身に付けられるような配慮が必要だ。このほか、学校が地域の避難所となった場合などに備え、地域ぐるみの防災(避難)訓練を実施し、災害時の対応について訓練を積んでおくことも重要である。

地域や学校の特性に応じた
防災マニュアルの作成

地理・地形的な条件、施設、教職員や生徒の数、就学の形態など、各学校によって特性が異なり、災害への対応も一律ではない。そのため、各学校共通の事項だけではなく、個々の学校に対応した災害時の対応手順が重要だ。また危険等発生時対処要領(危機管理マニュアル)は、危険等が発生した際に教職員が円滑かつ的確な対応を図るため、学校保健安全法に基づき、全ての学校で作成が義務付けられている。

文部科学省では『学校の危機管理マニュアル作成の手引』『学校防災マニュアル(地震・津波災害)作成の手引』などの冊子を公開し、学校ごとの防災に対する準備を進めている。また都道府県の教育委員会でも防災マニュアルが作成されており、文科省の「都道府県・政令市教育委員会作成資料一覧」として紹介されている。地域や対応する災害の内容からの検索・閲覧が可能となっている。

アンケートで防災について聞く

これらをふまえ、各高等学校に学校の防災をテーマに現状と課題についてアンケート調査を行う。主な内容は以下の通りである。

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まず学校の防災体制の現状について。ここでは地域防災計画との連携、特別の設備・機能、避難所運営の方法や職員の役割分担についての検討や準備をたずねる。

次に学校の防災体制のあり方と課題について。具体的には発災時別の生徒の安全確保方策、防災教育、学校施設の耐震性の強化や設備・備品等の安全対策、情報連絡体制の整備、避難所としての学校の役割と防災機能、教職員の役割の明確化と人的支援体制の整備、学校教育活動再開への対応などである。

「アンケート調査報告(1)【Q1~Q5】」はこちら

「アンケート調査報告(2)【Q6~Q9】」はこちら

「アンケート調査報告(3)【Q10~Q15】」はこちら

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